一章 薬師とか穢れとか
二話 人恋しいんだけど、いやマジで
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嬉しさの余り思わず声が出る。その声で門番らしきものがこちらを一瞥するがそんなことより私は数年ぶりの人の姿に感動したのだった。足取り軽やかに、それはもうスキップするくらいの感じで村の方に向かっていく。一体この村にはどんな人が居るのか。なにか美味しい食べ物はあるか。可愛い子は居るのかなど、今まで止まっていた思考が一気に溢れ出した。
「…お前。」
しかし、門番の近くまできて足を止めた。止めざるを得なかった。その門番から発せられるオーラのせいである。暗くてお互いによく顔は見えいていないがピリピリと伝わってくる。ああこのオーラ私知ってるわ。異形の物のそれとは全く比べ物にならないくらい小さいが、これはあれである。明確な
…敵意…
「あの…怪しいものじゃないです?」
何故か疑問形になってしまった。その言葉を最後に一瞬だけ沈黙が訪れる。
「…妖怪だ!!妖怪が来たぞ!!総員放て!!」
その門番がそう叫ぶと同時に至る所から矢が飛んできた。量がやばい。一体どこからそんなに飛んで来るんですかね…というか。
「なんでぇぇ!!」
逃げる。それはもうなりふり構わず。当たる矢だけ能力で相殺しつつ全力で逃げる。
私的には友好的に人畜無害に過ごすつもり満々だったのにあちらさんにその気は無いらしい。踏んだり蹴ったりこんちくしょう。
おーまいがー…
この世界に送ったのが神様なら私はお前を許さない。
「ひどい目にあった…」
また森に戻ってきました。めっちゃ精神的に疲れました。ええ。
しかし、どうしよう。敵意はないんだけどなぁ…近づけないと何も伝えられないし…
と、そこで無駄に良い耳に草を踏みしめる音が聞こえてきた。
「あんた面白いね。人里に真正面から入ろうとするなんてとんだ阿呆だよ。」
といきなり声を掛けられたその方を向くと人が立っていた。いや正確には人ではない。二十代くらいのお姉さんの風貌だが頭の上にあるイヌ科っぽい耳と腰のあたりに見える長い尻尾が人じゃない事を表している。服装はこげ茶色のコートみたいなものを上に着ていて下は黒いパンツ。胸元の赤いリボンが少し可愛らしい。動きやすそうな服装がそのカラッとした口調に合っていた。
「あんたの名前はなんだい?」
これが私の初めての妖怪との邂逅であった。
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