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Raison d'etre
一章 救世主
15話 広瀬理沙(5)
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かれ、イーグルめがけて加速した。
 近距離戦にもちこむのだろう、と奈々は予測した。追尾弾を撃たれる前に接近して叩くつもりだ。
 奈々の予想通り、優は接近しながら銃撃を開始する。イーグルもそれを悟ったように、優から逃れようと高度を下げて速度を稼いでいく。優も同様に高度を速度に変換し、その後を追っていく。
「位置取りは問題ありません。ループ機動に注意を!」
 隣で加奈が叫ぶ。
 しかし、イーグルは加奈の予想とは違って、いくつかの光弾を放った。
 発射直後に方向が微調整され、追尾弾が優の正面から迫る。優は方向転換を余儀なくされ、大きく下降した。
 追尾弾が優の後を追って向きを変える。優はチラリと背後を確認する素振りを見せた。
 逃げるのは不可能だと判断したように、優は銃口を後ろに向けた。銃声が響くが、イーグルの周囲をすり抜けていく。優の射撃精度はそれほど高くない。高速で回避行動をとるイーグルに対して、些か相性が悪いようだった。
 不意に、優は突然銃を左手に持ち変えた。空いた右手を後ろにかざす。
 高出力のESPエネルギーで広範囲に殲滅攻撃を行うつもりか、と奈々は画面を見守った。
 優の右手から大きな光が現れる。それが追尾弾に向かって発射されたと同時に、追尾弾の動きが変化した。まるで、優の放った光を追うような軌道を描く。
 ターゲットが優から光弾に変わったのだ。
 ――デコイ。
「人ではなく、ESPエネルギーを追尾している?」
 デコイを追い続ける追尾弾を眺めながら、奈々はぽつりと呟いた。
 イーグルが追尾弾を操っているのではなく、はじめから、あの追尾弾に『一定量以上のESPエネルギーを追尾する』という情報が設定されているようだった。
 追尾弾はイーグルの意思や思考とは独立しているらしい。すなわち、ESPエネルギーには情報を保存、搬送する特性がある、ということなのか。
 奈々の結論を裏付けるように、追尾弾が優の放ったデコイに衝突して爆発する。優は同様の手段で短時間で追尾弾を全て片付け、イーグルとの距離を縮めていく。
 そして、優の小銃がゆっくりとイーグルに向けられ、銃声が響いた。
 近距離からの銃撃でイーグルの体が弾ける。
 空を高速で飛び回る優と亡霊を見て、まるで戦闘機のようだ、と奈々は思った。誘導ミサイルにデコイ、と優たちの戦闘は、まるで近代戦術を模倣しているようだった。
 不意にイーグルの翼が消し飛んだ。
 片翼を失ったイーグルはバランスを崩し、高度を下げていく。追撃を加えようと接近していく優に対し、イーグルが最後の抵抗とばかりに追尾弾を放つが、再び優が放った囮弾に吸い寄せられていく。
 奈々はその光景を眺めながら、小さな違和感を感じた。華たちが放った通常の攻撃には
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