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Raison d'etre
一章 救世主
15話 広瀬理沙(5)
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したのか視界がぐらりと揺れる。
「……あ……っ……」
 機械翼へのエネルギー供給が途絶え、落下を始める。しかし、すぐに誰かが優しく抱き上げてくれたのを感じた。
 途方もない安心感が心を満たしていく。顔を見なくても、誰なのかわかった。嫌悪感は全くない。
 この人なら――――
 詩織は安らかな表情で意識を手放した。

◇◆◇

「良かった……間に合って、本当に、でも、優君、どうして……」
 奈々は戸惑った声でたずねる。
 優は少し考える素振りを見せてから、口を開く。
『街で好戦的なESP能力者と戦闘状態に陥りました。亡霊の出現を感じ、撹乱手段をとって離脱したのですが、本部へ戻る時間はない、と判断して現場に急行しました』
 奈々は素早く頭を切り換え、優の言葉を反芻した。街頭カメラの映像からすぐに虚実であると判断する。
「拘束状態からの離脱するためのやむを得ない行動、と判断していいのかしら?」
『……そうです。一時的な気絶状態に陥り、端末と携帯はその時に破壊されました』
 奈々の意図を理解したように、優が補足した。
 自然に、奈々と優の間で事実とは異なる話が出来上がっていく。すぐに戦闘状態に陥ったのでは、端末の破損を説明できない。敵に破壊される状況として、奈々は拘束を提案した。優もその意図を理解したようだった。問題は起こしたくない。
 優は襲撃者の不意打ちによって気絶し、襲撃者は優を利用しようと通信手段を奪って廃ビルに連れこんだ。優は目が覚めると同時に敵を撹乱し、そのまま離脱した、と奈々と優は短い通信の間に話を展開していく。通信を誰に聞かれても問題ないように、連絡と確認という風を二人は装った。
「大体の経緯は把握した。ところで、それは機械翼に似たものは何なの?」
 モニタに映る優の背中には、翡翠の光を放つ翼があった。奈々の知らない外装。
『いえ。機械翼を取りにいく時間はありませんでしたので、ESP能力を代用しました』
「ESP、能力?」
 奈々はすうっと瞳を細めて、優の言葉を反芻した。
 ESP能力は、未知のエネルギー体を放出するだけの力だ。少なくとも、奈々はそう解釈していた。ESP能力のこうした使い道は、過去に確認されていない。
 奈々はいくらかの仮説を考えた後、すぐに状況を思い出してヘッドセットに向かって口を開いた。
「敵はイーグル。追尾能力を有し、機動性に長けている。追尾攻撃に注意しなさい」
『了解です』
 優が頷く。
 イーグルは突然現れた優を警戒するように、距離をとって旋回を続けている。
 待機状態のイーグルに対し、優がゆっくりと銃を構える。銃声と同時に光弾がイーグルめがけて飛び出した。
 イーグルが回避行動に移る。同時に優の光翼が大きく羽ばた
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