一章 救世主
13話 広瀬理沙(3)
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「四人とも、イーグルから離れて。態勢を整え直しましょう」
◇◆◇
『四人とも、イーグルから離れて。態勢を整え直しましょう』
通信機から届く奈々の命令に、第三小隊長、佐藤詩織は静かに安堵の息をついた。イーグルから慎重に反転し、適正な距離をとる。イーグルも詩織たちと積極的に交戦する気がないのか、その場をゆっくりと旋回し始める。
ひとまず膠着状態に落ちつき、詩織は思考を戦闘からより広い範囲に広げた。
「司令、援軍を……桜井さんを……」
残った四人でイーグルを撃ち落とせるとは思えない。
脅威的なESPエネルギー出力量を見せた桜井優の存在が頭をよぎり、詩織は迷わず彼の名前を口にした。司令室もこのままではイーグルを撃墜する事が難しい事を理解しているはずだ。しかし、詩織の予想とは逆の答えが通信機から返ってきた。
『……それは出来ない』
奈々からの短い答えを聞いて、詩織は胸騒ぎを覚えた。
出撃前に桜井優の姿が見えないと京子たちが騒いでいた事を思い出す。
できない、とはまだ桜井優が見つからない、ということなのかもしれない。そうでなければ、桜井優の投入を渋る理由が見つからない。
既に亡霊が発見されてから一時間以上経過している。中隊員が持ち歩いている端末には出撃を知らせる機能があり、更に有事に備えGPS機能も有している。
優と連絡が取れないということは、優が戦闘できる状態ではない、もしくは端末が機能を失っている、ということだ。つまり、新たに戦力が投入されることは期待できない。
詩織は忌々しそうにイーグルを見つめた。
『高エネルギー反応。また来ます!』
通信機の向こうで解析オペレーターが叫ぶ。直後、解析オペレーターの予測通り、イーグルから新たな光弾が飛び出した。その先には華の姿。しかし、華は動かなかった。迫りくる光弾をただじっと見つめているだけだ。
『華!』
奈々の鋭い声。
詩織は光弾を落とそうと銃を構えた。だが、光弾の速度が高すぎる為、補足ができない。
光弾が華に迫る。
それに合わせて華の銃身があがった。
光弾が着弾する寸前、華が構えた小銃の銃口から閃光が走った。発砲音と同時に、迫っていた光弾が霧散する。詩織は一拍遅れて、華の迎撃が成功した事を理解した。
詩織が呆けている間に、華はそのまま流れるようにイーグルに向かって接近していく。一瞬で距離が詰まり、華の小銃が弾けた。イーグルの身体にESPエネルギーの嵐が殺到し、それを振り切るようにイーグルの高度が急速に低下し始める。華もそれに続いて高度を下げ、イーグルの後ろをとって追撃を開始する。
「……すごい」
詩織の口から自然と呟きが漏れる。自分の動きを制限することで、イーグルの誘導弾が直線を描く
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