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Raison d'etre
一章 救世主
13話 広瀬理沙(3)
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度で詩織がイーグルとの距離を詰めていく。そして、イーグルが詩織の射程に入ると同時に連続した轟音が轟いた。光の雨がイーグルに降り注ぎ、その動きが鈍る。
『咲、凜。目標を包囲!』
 詩織の作りだした好機を見逃すまいと通信機から奈々の命令が届く。その命令に従うように、青空に二つの影が走る。第五小隊長の進藤咲と第六小隊長の白崎凜(しらざき りん)がイーグルを包囲する為に、詩織の左右に散ったのだ。
 華はイーグルの動きが完全に他の小隊長に向いている事を確認してから、負傷した舞を連結ベルトで自らの身体に固定し、それから洋上の哨戒艦艇に向かって降下を始めた。
 艦艇の甲板に降り立つと、すぐにスタンバイしていた医療チームが集まってくる。華は治療の邪魔にならないように少し離れたところまで下がり、上空を見上げた。
 詩織からの絶え間ない攻撃によってイーグルの機動が制限され、そこに至近距離から凛と咲が銃撃を加える事によってイーグルの戦闘機のような胴体が小さく炎上しているのが見える。勝てない相手ではない。華は治療中の舞をチラリを見た後、機械翼を広げて再び空に舞い上がっていった。

◇◆◇

 神条奈々はディスプレイの向こうで行われる激しい戦闘を眺め、表情を曇らせた。
 何度も攻撃を受けているにも関わらず、イーグルは弱る気配を見せない。今まで観測された亡霊とは性能が違いすぎる。
 ディスプレイの向こうで、爆炎の中からイーグルが飛び出すのが見えた。次いで、イーグルの口が大きく開かれ、そこから光弾が勢いよく放たれる。光弾は物理法則に逆らったカーブを描き、第五小隊長、進藤咲を目指すように空を駆けた。
 咲が直ちに攻撃を中止し、回避運動に移る。しかし、イーグルとの距離が近すぎて避けきれない。一早くそれに気付いた凛が、不自然な動きで咲を追尾する光弾に銃口を向ける。直後、数回銃声が大空に響いたが、光弾を撃墜するには至らなかった。光弾が変わらず咲の背後に張り付く。
 咲はそれを振り払おうとするように何度も急旋回を繰り返す。しかし、光弾が追跡を諦める様子はない。
 光弾が咲に迫る。次の瞬間、ESPエネルギーの激しい波が咲を飲み込んだ。
 奈々は発光するディスプレイを見つめ、双眸を鋭く細めた。
「あの追尾能力を振り切る事が出来る手段は?」
 近くの解析オペレーターに視線を向ける。解析オペレーターは小さく首を振った。
「どれだけ角度を切っても、あの光弾は大きく軌道をとって旋回するようになっています。追尾距離も不明です」
 奈々は苦々しい表情を浮かべ、ディスプレイに視線を戻した。爆炎から、一つの影が海面に向かって堕ちていくのが見える。
「みなみ、回収お願い」
 洋上の哨戒艦艇みなみに向かって叫び、すぐに中隊への命令も加える。

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