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Raison d'etre
一章 救世主
12話 広瀬理沙(2)
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らば」
 憎しみの籠った声だった。
「私は、ハーフという新しい種として生きるしかない」
「……軍に入る気はないんですか。ESP能力者だけで構成された中隊ならば、きっと――」
「ない。無理だよ。それこそ奴等の思う壺だ。もう、あたしは人間社会に関わるつもりも、従うつもりもない」
 人死が出た時点で説得はもはや不可能な域に達しているのかもしれない。
 優はじっと理沙を見つめた。
 理沙の言う通り、恐らくESP能力は司法の加護から外れてしまっている。司法は、彼女を保護しない。彼女は公正な裁きを受ける事ができない。それを理解して、彼女を警察機構に突き出す事が優にはできなかった。例え彼女が人を殺めていたとしても。
「……広瀬さんがここにいることは、軍にはすぐに分かります」
 理沙が睨みつけてくる。
「何を言って――」
「軍にはESPエネルギーを探知する技術があります」
「それくらい知ってる。固有の波形から人物まで特定できるんだろ。だから、すぐにあの場からは離れた」
「ESPエネルギーを使ってない状態でも、探知範囲を狭めて精度を上げれば通常状態でも探知が可能なんです。しかも、僕のESPエネルギーは平均より大きくて、探知されやすいです。このまま僕といれば補足されるのは時間の問題です」
 理沙の顔が警戒するように歪む。
「だから、今すぐ逃がせってわけ?」
「そうです」
「馬鹿げた事を――」
 理沙が毒づくのを遮って、優はにっこりと笑みを向けた。
「その代わり、あなたの逃走をお手伝いします」

◇◆◇

 奈々の指揮で自衛軍とは独立した亡霊対策室独自の桜井優の捜索が始まっていた。
 奈々は何の収穫もなく司令室に向かった。保安部の者が総出で既に優を散策しており、発見され次第連絡が来るように手配されている。
 ESP能力者による殺人を、奈々はどう受け止めて良いか分からなかった。それは警察の考える事であって、自分の仕事ではない、と無理矢理頭の隅に追いやる。
 司令室には既に調査の中間報告が寄せられていた。首都圏からは新たなESPエネルギー反応は確認されず、少なくともESP能力による新たな被害者は出ていないという。
「進展はなし?」
「はい。桜井優の行方も掴めていません。対ESPレーダーの精度をあげて調べていますが、時間がかかるそうです」
「……独自に街頭カメラの記録も徹底的に調べて。発見した場合、戦略情報局には伝えず、こちらで処理する」
 奈々はいくつかの書類を手に取った。特定された容疑者の情報が記されている。
 広瀬理沙。女。十八歳。夢野高校三年生。
 調査書に同封されていた写真に目をやる。恐らく高校の文化祭に撮った集合写真だろう。集団の端で一人立っている。周りが
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