一章 救世主
8話 長谷川京子
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為、個人技能の習熟は実戦では効果が薄い。その為、これまでは集団戦を想定した飛行訓練や隊形移動を中心にしたカリキュラムが組まれてきた。
「何の為だと思う?」
奈々はディスプレイを眺めたまま立ち尽くす加奈を見やった。加奈は何も答えない。奈々は再びコンソールは叩いた。
「次にこれが広報活動に関する通達」
画面が切り替わる。すぐに加奈の瞳に驚きの色が宿った。
「優君をメディアに露出させる? 彼、未成年ですよ」
ディスプレイには、広報活動に桜井優を起用するという旨が長々と表示されていた。顔写真に映像、そして本名の公開。また、その公開に関するメディアの選別も既に終わっているようだった。予算、そして、期日までもが明記されている。
「たった一人の男性ESP能力なのだから情報を開示する社会的責任がある、という建て前でしょう。けど、社会的不安を取り除く為に偶像化される事は避けられない」
「プロパガンダ、ということですか?」
「そう捉えても問題ない。それとね、まだ言ってなかったけど、今朝ある報告があったの」
奈々はそう言って再びコンソールを叩いた。途端、画面にヒストグラムが表示される。
「珍しい形をしていますが、標本はなんですか?」
興味深そうにヒストグラムを見ながら、加奈が問う。ヒストグラムはガウス分布に近い形をとりながらも、山から遠く離れた右端に一つだけ点がある。
「中隊員の瞬間出力ESPエネルギーの分布よ。横軸はESPエネルギーの瞬間出力量、縦軸は該当人数を示す。見た通り左の山は綺麗な形をしているでしょう? 平均的な出力量を持つ中隊員が一番多くて、ずば抜けた出力量や出力量が乏しい人は人数が減っていく。でも、この山から離れた存在が、右に一点だけある」
奈々はディスプレイの右端を指差した。そこには一人の分布を示す小さなバーが盛り上がっている。
「さっきも言った通り、横軸はESPエネルギーの出力量。つまり、一人だけ瞬間出力ESPエネルギーの突出した存在がいる」
「まさか、優君ですか?」
加奈の言葉に奈々は頷いた。加奈が混乱したように額を押さえる。
「まさか、だって、最初に計った時はこんなに……」
「そう。入隊時に計った瞬間最大出力量は平均より少し高い程度だった。でも、彼が復帰してから再計測した結果がこれ」
加奈が息を呑む。
「短期間でこれだけ成長したって事ですか? いえ、そもそも出力エネルギーが上昇するなんて、聞いた事がありません。彼女たちの超能力は、訓練によって伸びるものではないはずです」
「そのはずだった。でも、実際に彼の出力エネルギー量は増大している。成長したというよりは、顕在化しただけかもしれない。これから成長する可能性は低いでしょう。でも、これで戦略情報局が干渉してき
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