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Raison d'etre
一章 救世主
6話 佐藤詩織(2)
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それを見た少女が慌てたように助け船を出す。
「第三小隊長の佐藤詩織です」
 正直、まるで覚えがなかった。返す言葉が見つからない。
 気まずい沈黙が到来するのを予感して、優は適当に口を動かした。
「……えっと……久しぶり……?」
 誠意の欠片もない言葉を放ってから、凄まじい後悔が襲ってきた。
 詩織は困ったように笑みを零す。
「あ、やっぱり、はじめましてだよね? ごめん、記憶力なくって」
 再び沈黙が落ちそうになり、慌てて言葉を重ねる。少女は言葉を選ぶように目線を泳がせながら、口を開いた。
「……ちゃんと挨拶したことないから、はじめましてで良いと思います」
「そっか。そういえば、そんな気がするかも」
 再び訳の分からない言葉が飛び出す。
 何だこの空気、と優は落ち着きなく、少女を見やった。
 詩織もそわそわした様子で、一向に目を合わせようとはしない。見た目はしっかりした感じだが、どうやら中身はそうでもないらしいようだった。
 一瞬、嫌われてるのかな、と思うも訪ねてきたのは向こうだ。一体この少女は何をしに来たのだろう、と首を傾げる。
「えっと、良かったからこれ食べる……?」
 沈黙に耐えきれず、優は棚の上に置いてあったプリンを手にとった。会話の流れが優自身わけがわからなかったが、沈黙よりはましだと思った。
「神条司令官から貰った結構有名な店のものらしいんだけど、食べきれなくって。あ、嫌なら無理にとは……」
「ぁ……えっと、いただきます」
 優はプリンの上に使い捨てのスプーンをのせ、手渡した。おずおずと手を出した詩織は、受け取った瞬間、びくりと肩を震わせた。
 やっぱり嫌われているのだろうか。そう思うも、嫌われるようなことをした覚えが全くない。何せ、向こうの言い分では今日会ったばかりなのだ。
 疑問に思いながら、優は自分用のプリンを手にとった。こちらも食べないと、詩織が食べづらいだろう、と気を遣った結果だ。
 座ったらどうかな、と勧めると、詩織はようやく来客用の椅子に腰掛けた。
「ルーライズって知ってる?」
 食べながら問いかける。
「ルー……ライズ……ですか?」
「うん。洋菓子の専門店なんだけど、かなりおすすめ。このプリンの五倍おいしいかな」
「……甘党なんですか?」
「将来、糖尿病になりそうなくらい」
 少し会話が繋がり、優は微笑んだ。
「……男の人って、そういうの駄目なんだと思ってました」
「確かにダメな人は多いね。僕がまだ子どもだから大丈夫なのかも」
 食べる、という動作が会話を副次的な要素に追いやり、少し緊張がほぐれたのだろうか。今まで受け身だった詩織がぽつぽつと話すようになった。
「前に私が怪我した時、神条さん、これと同じ
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