一章 救世主
1話 神条奈々
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いた。
「大した質問がないようなら切りあげましょう。そういう質問は後日、個人的にしなさい。今日はこれで解散。優君だけ、私と一緒に来てくれる?」
「はい」
優が頷くと、奈々はさっさと戸口に向かって歩き始めた。同時に少女たちのひそひそ話が始まる。優は室内を一度だけ眺めてから、奈々の後を追って廊下に出た。
「うるさい子達でしょう?」
廊下に出て早々、奈々が呆れたように言う。優は曖昧な笑みを浮かべた。
「女子が静かすぎると、怖いです」
「それは言える。君以外は全員女性だから、色々とやりづいらいかもしれない。何か困った事があったら遠慮なく相談してね」
「はい」
頷きながら、エレベーターに乗る。奈々が黙り込んだ為、優も口を閉ざした。
エレベーターが動き出す。
微かな駆動音。
優は奈々の綺麗な横顔をじっと見上げた。その地位に反して異常とも言える若さと美貌。整いすぎた鼻筋からはどこか冷徹な印象を受け、奇妙な威圧感を覚える。周囲の空気を変えるほどの容姿は、人を従える立場の人間として非常に恵まれた素質と言えるだろう。神条奈々は生まれながらにしての統率者だった。
奈々の顔を見惚れていた事にふと気づき、優はそっと奈々から視線を外した。
奈々と出会ってから一週間経ったというのに、一向に慣れる様子がない。そこまで考えて、もう一週間経ったのか、と優は感嘆に浸った。
桜井優には、超感覚的知覚(ESP)と呼称される能力がある。その能力を持った者だけが集められる特殊戦術中隊に勧誘を受けたのが、一週間前の事だった。
特殊戦術中隊はその名の通り、軍事的な目的を持つ組織である。しかし、その矛先は通常の軍事的組織と異なり、人には向けられない。特殊戦術中隊の目的は、亡霊と呼ばれる生命体の殲滅にある。そして、通常、ESPは女性にしか発現せず、特殊戦術中隊は女性だけで構成されていた。
男性の発現例は、桜井優だけだ。何故ESP能力が発現したのか、優本人にもわからなかった。明確なきっかけは、何もなかった。ある日突然訪れた軍の関係者によって、告げられた。君にはESP能力がある、と。
エレベーターの扉が開く。奈々が一歩踏み出したのを確認してから、優もそれに続いた。
エレベーターの外は吹き抜けになったエントランス・ホールだった。そのホールを奈々が真っすぐ横断していく。取り残されないように、優は足を速めて奈々の後を追った。
エントランス・ホールの裏から外に出る。そこは、野外の射撃訓練場だった。冷たい秋風が頬を撫でる。
「今日から、実際に火器を扱って貰う事になる。安全の為、指示通りに行動すること」
「はい」
射撃場の奥にいた男が二挺の小銃を抱えてやってくる。奈々は男から小銃を受け取り、一挺の小銃を優に
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