第四十二話 山伏その九
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「店の中でまずいだの騒ぐ奴は邪魔だ」
「立派な営業妨害ですからね」
「化学調味料が駄目だとか言ってな」
こちらの世界には当然ながらない、彼等の世界の話をしているのだ。
「煮方が駄目だとかもあったな」
「口に合わないならですね」
「十人いれば十人の舌がある」
「だからですね」
「まずいなら仕方ないが」
それでもというのだ。
「それで店の中で騒ぐのは無粋だ」
「営業妨害ですし」
「そんなことはしない、その漫画を読んでだ」
「英勇君は美食家がお嫌いになったと」
「自分でそう思うこともなくなった」
「そうなのですね」
「美味いなら美味いでいい」
それで終わりだというのだ。
「自分は美食家でまずいものを食ったと言って怒る様ではな」
「駄目というのですね」
「野蛮だ」
そうした行為はというのだ。
「俺は野蛮にもなりたくない」
「それで今もですね」
「味覚が鋭くても自慢しない」
それはしないというのだ。
「美味いものが楽しめればそれでいい」
「左様ですか」
「そうだ、ではだ」
「鯉をですね」
「食っていこう」
「酒もいいでござる」
智は飲みつつ言った、他の面々も飲んでいる。
「こちらも」
「都の酒は絶品であります」
峰夫もそれを飲みつつ言う。
「やはり」
「水がいいからでござるな」
「はい、酒は水であります」
「水がいいとでござる」
「酒もよくなる」
「そうでござる、都はまことに水がいい」
笑みを浮かべつつ飲んでの言葉だ。
「酒も美味い、では」
「より飲むであります」
「そうするでござる」
「般若湯の味もぞれぞれで」
謙二は今も酒をこう呼んでいる。
「本当に水が大きく関係しますね」
「そうであります、火山灰の場所でありますと」
「水が悪いので」
「まずくなります」
酒もというのだ。
「どうしても」
「そうですよね、そういえばこの島にも富士山がありますが」
「富士山は火山であります」
峰夫ははっきりと言った。
「ですから」
「それで火山灰を出すので」
「その周りの水は悪くなります」
「どうしても」
「ですから富士の近くは」
その辺りはというのだ。
「酒もまずいでござる」
「そうなのですね」
「一度あの辺りにも修行で行ったでござるが」
「般若湯がまずく」
「水もであります」
こちらもというのだ。
「塩辛いものでありました」
「行くにはどうも」
「気が進まない」
「そう思いました」
こう峰夫に言う謙二だった。
「この辺りは本当に有り難いです」
「水がよく」
「その結果酒もいいので」
「やはり水であります」
峰夫はこれが第一とした。
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