5.冬
[1/4]
[8]前話 [1]次 最後
冬。一年もの長きに渡り、ずっと我慢を強いられていた私たちみかんが、ついに本領を発揮する、私のための季節だ。
「わぁ〜。今年も大きなみかんがたくさん成ったのです〜」
「ホントだなぁ〜イナズマぁ〜」
集積地と電が、白い吐息を吐きながら、きれいなオレンジ色に染まった私の実をしげしげと見つめた。電はピンク色の可愛らしいミトンを、集積地はその抹茶色のジャージによく似合う、無骨な軍手をその手につけていた。
「今年も豊作ですねイツキさん?」
「さすが先輩。毎度のことながら、俺たち後輩にうまいみかんを届けてくれる……いやぁ、頭が下がりますなぁ先輩っ」
水色のバケツを持った大淀が私をそう賛辞を送ったかと思えば、提督のサクラバは私の幹をバシバシと叩く。私のことを先輩だと思うのなら、少しはその失礼な態度をわきまえていただきたいのだが……まぁいい。喜び故のハメ外しだと受け取ろう。
「ホントですね。今年も美味しいみかんが食べられそうです」
「秋口はすっぱいみかんでひどい目を見たからな……それはそれは美味なみかんでなければ、私も困る。キリッ」
赤城とロドニーもうれしそうだ。しかしロドニーよ。私の気遣いを『ひどい目』とは何事か。私はお前のことをこんなにも案じていたと言うのに。まぁいい。照れ隠しだと受け取っておこう。
その後鳳翔や変態ソラール、神通や川内といった面子も顔を出し、私の身体に成ったみかんの実の収穫が始まった。
「ではいただくのです。よいしょ」
うむ。心して食せ電。
「よっ……あれ……取れない……」
無理して引きちぎろうとするんじゃない集積地っ。キチンと電のように剪定バサミを使えっ。
「ハサミを使うのめんどくさいな……剣ではダメか?」
「キチンとハサミを使いましょうよ……余計なところを斬っちゃうでしょう?」
赤城の言うとおりだぞロドニー? キチンと剪定バサミを使え。パチンと切るその快感は癖になるぞ。主に私が。
「みかんさん今年もごちそうさま! お礼に今度、せんせーに内緒で夜戦に付き合ってあげるよ!!」
「姉さん……でも、ホントに毎年、美味しそうなみかんですね」
……夜戦とは一体……? 木である私に一体何を期待しているのやら……
そんなこんなで、みんなでわいわいと賑わいながら、一つ、また一つと、和体の身体のみかんが収穫されていく。
「よし。あと二、三個だな」
と残り少なくなった私の実にソラールが手を伸ばした時。
「先生? それらは木守りですから、収穫してはダメですよ?」
と神通が制止していた。
「木守り?」
「ええ。他の小鳥たちへのおすそ分け兼、来年もまた豊作でありますようにというおまじないです」
「なるほど。ではこれら
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ