5.冬
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の間にか雲に隠れ、やがてたくさんの真っ白い雪が、周囲に積り始めた。
「ああ。本格的に降り出してきましたね。智久さんにあとでマフラーでも届けましょうか……」
「やったのです! これなら雪だるまも作れそうなのです!!」
「よし! じゃああとでどっちが大きい雪だるまを作れるか競争だなイナズマ!!」
「ぇえ〜……電は集積地さんと一緒に雪だるまを作りたいのです……」
「ええっ……そんな……イナズマ……っ!」
みんなが大騒ぎする。この地はあまり雪がふらない。ゆえに電たち小さい子は雪が降れば大騒ぎだ。数十分後、電と集積地の2人は、きっとお化けのように大きな雪だるまを作って、私の隣に置いてくれることだろう。
「……ぉお神通、見ろ」
「はい? 先生どうしました?」
「みかんの木にも雪が積もっているが……木守りのみかんがとても鮮やかでよく映える」
「ホントですね〜……とてもキレイです」
「ああ。まるで空に浮かび、我々を暖かく見守る太陽のように美しい……」
「ホント……オレンジ色がお日様のように映えますね……」
変態ソラールと神通も、私の木守のみかんを見つめて、そんな風に目尻を下げていた。
「よし……日頃の意趣返しとして、普賢院智久には私が選んだすっぱいみかんを……」
「あなた不思議とすっぱいみかんを引き当てますもんねぇ……でもそういう時に限って、美味しいみかんを引き当てちゃいますよ?」
「なんだとッ!? ならこれならどうだ赤城ッ!?」
「どれどれ〜……うん。とても美味しい上等なみかんです」
「バカなッ!? どれどれ……くおッ!? すっぱ!!!」
「同じ実なのに、美味しかったりすっぱかったりするんですねぇ。勉強になります……」
「房単位かッ!? 房単位で私が選ぶものは酸っぱいのかッ!? どんな運命のいたずらだッ!!」
と騒ぐロドニーと赤城だが……ロドニーは知るまい。そうやってすっぱいみかんで悶絶しているその腰には、お前のことを常に案じ、そして今は主の醜態に冷や汗をかいている、忠義の士、剣がいるということを。
ともあれ、私は今年も仕事を成し遂げた。皆に美味しいみかんを届ける……世界でたった一人だけ、私だけが出来る、私にのみ許された、私だけの使命……そして、私の喜び。
「みかんさん、みかんさん」
皆が今年のみかんの出来にうなり、ロドニーが酸っぱさに悶絶して大騒ぎしている中、鳳翔が静かに私の元にやってきて、その暖かい右手で、私の幹に触れた。
「みかんさん。……おかげさまで、今年もおいしいみかんにありつけました。今年もお疲れ様でしたね。ありがとう」
いや、礼には及ばない。このみかんは、いつも私を献身的に世話してくれる皆への、いわば私からの礼だ。遠慮なく受け取ってくれ。そして、美味し
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