5.冬
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は収穫せず、残すべきだな」
そうして木守りの実を残し、ほぼすべての実の収穫を終えた彼らは、
「……では、今年のみかんをいただきましょうか」
という鳳翔の声とともに、一つずつ私のみかんを手にとって、皮を剥き始めた。各々皮を剥き終わり、一房取って、それを口に放り込むと……
「……ん!」
「美味しい!!」
「ん〜甘酸っぱいのです!!」
「くおッ!? 今年もすっぱ!!!」
と約一名を除き、最高の出来に仕上がった私のみかんへ、惜しみない賛辞を送ってくれた。
「ん〜……今年も上々ですねぇ……」
「どこが上々だっ……秋口のやつよりもさらに酸っぱいじゃないかっ!」
私の実の甘酸っぱさを堪能する赤城のその横で、相変わらずロドニーは顔のパーツのすべてを顔の中央に集めて、涙目で身震いしていた。しかし運が無いなロドニーは。毎年すっぱいみかんの被害者第一号だなぁお前は。
しかし、私も誇らしい。この一年の努力の結晶が、こうして皆の口に運ばれ、そして『うまい』と称賛してくれる。みかんとしてこの世に生を受けた者として、これ以上の幸せはあるまい。私が最もうれしいのは、この、『美味しい』の一言だ。
「ん〜おいしい〜! せんせーにも持っていってあげなきゃ!」
川内が嬉しそうな笑顔で、そんな嬉しいことを叫んでいる。そこまで言われると、わたしもみかんとしてとても誇らしい。
「ホントですね。こうやって、毎年美味しいみかんが食べられる……智久さんにも、食べもらえる……これもすべて、みかんさんのおかげですね。ありがとうございます」
智久というのは確か……時々鳳翔とともに来て、チェロとかいう姉妹と共に音楽を奏でてくれる彼のことだったはずだ。そうか。私の一年の努力の結晶を、彼にも食べていただけるか……うれしいな。皆に認められ食べてもらえ、そしてほめてもらえるというのは。
……だが鳳翔。そして鎮守府の皆。私こそ、皆に感謝する。皆が私を愛し、献身的に手入れして、そして美味しい実がなる手助けをしてくれていたからこそ、私は毎年、こんなに美味しいみかんを皆に届けることが出来るのだ。
いわば、この美味しいみかんは、皆の努力の結晶ともいえる。そんな素晴らしいみかんを皆の口に届けることが出来る私は、みかんとしてこの上なく幸せだ。
私こそ、皆に感謝する。ありがとう。私に美味しいみかんを皆に届ける役目を与えてくれて……。
そんな風に皆が私のみかんを堪能し、私が感慨にふけっていたら……
「……あ、集積地さん! 雪なのです!!」
「ホントだ! 積もったら雪合戦でもやるかイナズマ!!」
「はいなのです!!」
空からはらりはらりと、雪が降ってきた。知らないうちに空は曇っていたらしい。お日様はいつ
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