第四十話 高城への進軍その九
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「高城にはいますけど」
「それでもだね」
「はい、うって出る気配もないですし」
「周りの九州の軍勢もだね」
「今のところですが」
それでもというのだ。
「動く気配はないです」
「一戦してもいいんだけれどね」
玲子は己の朱槍の刃を見て笑って話した。
「ここで、けれどね」
「相手次第ですね」
「今のあたし達は戦に来てもね」
「攻めるのが目的ではないですね」
「進むべきところに進むだけだよ」
それが中里と芥川に言われた役割だというのだ。
「今はね」
「では今は」
「攻めてきたなら退けるけれどね」
戦ってというのだ。
「けれどね」
「こちらからはですね」
「積極的にはね」
「攻めない」
「大将と軍師さんに止められてるんだよ」
特に芥川にだ。
「だからね」
「ここはですね」
「進むだけだよ、ただね」
「敵の伏兵や奇襲にはですね」
「注意しないとね、いいかい?」
ここで玲子は上を見上げた、そうして空を飛べる兵達や空船に乗っている者達に言った。
「何か見えたらね」
「その都度ですね」
「知らせる」
「そうせよですね」
「そうだよ」
空にいる彼等に笑って話した。
「いいね」
「わかっています」
「任せて下さい」
空にいる彼等も笑顔で言葉を返してきた。
「何か見付けたら知らせます」
「それも即座に」
「頼むね、斥候も出してるけれどね」
前だけでなく左右にもだ。
「やっぱり空から見るのが一番だよ」
「その通りですね」
「敵を把握するなら」
「だからだよ」
笑って言うのだった。
「頼んだよ」
「わかっています」
「そのことも」
空から返事が来た、その返事を受けて玲子は笑って言った。
「よし、じゃあこのままね」
「進撃ですね」
「高城の前まで」
「そうするよ、ここからが肝心だよ」
玲子は今度は高城を見つつ兵達に話した。
「高城を囲んでね」
「そうしてですね」
「それからは」
「いいかい、下手な動きをするんじゃないよ」
つまり自分の采配に従って勝手な動きをするなというのだ、このことに釘を刺してそのうえでだった。まずは彼女が率いる先陣がだ。
高城の前にある川を渡った、そうしてだった。
続く井伏と山本が率いる二陣も正岡と織田がそれぞれ率いる左右の軍も川を渡り高城を包囲にかかった、その動きを本陣から見てだった。
芥川は確かな笑みを浮かべて自分の隣にいる中里に言った。
「ええ感じや」
「手筈通りやな」
「ああ、勝手な動きがなくてな」
「城を囲んだな」
「それで僕等も川を渡ってや」
こう中里に話すのだった。
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