巻ノ百二十五 真田丸その六
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「それか」
「この面子で今から飲まぬか」
「ははは、そちらも大歓迎じゃ」
長曾我部は笑い声も立てて後藤に応えた。
「わしは酒は大好きじゃ」
「わしもじゃ」
「わしもまた」
毛利と塙も続く。
「ではな」
「これから飲むとするか」
「酒ならばな」
今度は明石が言った。
「それがしもいけるくちで」
「ははは、それはそれがしも同じこと」
「我等兄弟も酒も望むところですぞ」
大野兄弟もだった、戦だけでなくそちらもというのだ。
「それならば」
「これより酒を出して飲みますか」
「肴もいいものがありますし」
木村が言うその肴はというと。
「大坂の海で獲れた魚や貝が」
「それがまたよいですな」
幸村は木村のその言葉に笑みで応えた。
「魚に貝とは」
「そういえば真田殿も酒は」
「好きでして」
「そして肴はですか」
「上田の山の生まれでこれまでもずっと九度山にいたので海の幸には縁がなかったので」
それでというのだ。
「ですから」
「では海の幸をですな」
「はい、頂き」
そしてというのだ。
「飲みたいですな」
「ではすぐに酒を出して」
木村は幸村のその言葉に笑みで応えて言った。
「そして海の幸も」
「それではこれより」
大坂の諸将は酒も飲み海の幸も楽しんで互いの絆も深めていっていた、そうして戦を待っていたが。
治房と治胤は兄に幸村の話をした、すると大野はその話を聞いてまずは納得した顔でこう弟達に言った。
「うむ、それならな」
「よいですな」
「兄上もそう思われますな」
「わしも戦の経験は少ない」
このことを自覚してのことだった。
「だからな」
「ここはですな」
「真田殿達にお任せする」
「だからですな」
「真田殿の策をよしとされますか」
「後藤殿も頷かれたのであろう」
大野はこのことについても言った。
「真田殿の策には」
「はい、問題ないとです」
「太鼓判を押されています」
「多くて二万の兵で大坂を守り」
「残りの兵で外に出る戦でよいと」
「そして他の将の御仁も頷かれたのなら」
それは自分の弟達もその中にいることも承知のうえだ。
「ならばな」
「兄上としても」
「異存はありませぬか」
「うむ、確かに大坂城ならばじゃ」
この城ならというのだ。
「二万の兵を置けばな」
「誰も攻め落とせぬ」
「絶対にですな」
「だからそれだけの兵で守り」
「他の兵で外を攻めるべきですな」
「そう思う、篭城しても先はないしのう」
大野もこのことはよくわかっていてその通りだというのだ。
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