4.秋
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てやろう。それで元気を出すがいい。
そう思い立った私は、ちょうどタイミングよく吹きすさんだ風に必要以上に煽られたフリをして、その拍子にわざと、実を一つだけ地面の上に落とした。
「?」
地面に落ちた私の実は、コロコロと転がってロドニーの足にコツンと当たる。その実はてっぺんこそほんのり青いが、全体はすでにきれいなオレンジ色だ。これは私にも分かる。このみかんはすでに食べごろだ。
「これは、……お前が私を元気づけるためにくれたのか?」
足元に転がってきた私の実を拾い、ロドニーが不思議そうにつぶやいた。そのとおりだロドニーよ。今年一番最初の実をお前に与えよう。その実を食べて、少しでも元気を取り戻すがいい。
「では、ありがたくいただこうか」
フッと笑ったロドニーは実の皮を丁寧に剥き、そして中身を一房取ると、それを口に運ぶ。その途端……
「……くおッ!? すっぱ!!!」
と顔面のすべてのパーツを中央に集めて悶絶し始めた。
「くぉぉぉおおおッ!! まだ酸っぱかったか……! やはり早すぎた……ッ!?
しまった……まだ酸っぱかったか……私としてはロドニーが『うん。甘酸っぱくて美味しい』と言ってくれることを期待したのだが……
「貴様……何をする……ッ!? ちょっとセンチメンタルな気分に陥ってしまっている私をあざ笑っているのかッ!?」
申し訳ない……私としてはまったくそんなつもりはなくて、ただそんなお前を元気づけたかっただけなのだが……しかし、そんなに酸っぱいのか……顔面の中央に寄ってしまっているお前のキレイな瞳に、うっすら涙が溜まっているぞ……
それなのに。
「ひぃ……すっぱ……一体私に……何の恨みが……ッ!?」
そう言って恨み節をこぼしながらも、ロドニーは私のすっぱすぎるみかんを食べることを、やめようとはしなかった。
「うう……」
時々身体をぶるっと震わせて、ロドニーはそれでも最後まで、私のみかんを食べることをやめようとしない。一房一房、丁寧に食べては、顔の真ん中にパーツを集めて、身悶えしている。
ついにすべてを食べ終わったロドニーは、みかんの皮を丁寧に折りたたみ、そしてゲホゲホと咳き込んだ後、皮を懐へと入れた。
「……ふぅ。らしくなかったな。このすっぱいみかんは、お前の気遣いであると同時に、イカズチの叱責なのかもしれないな。あいつなら『ダメよロドニー!!』とかいいそうだし」
……おっ。最初はどうなるかと肝を冷やしたが、なんとか好意的に受け入れてもらえたようだ。涙を浮かべてはいるものの、ロドニーは私に向かって、フッと柔らかく笑ってくれた。
その意気だロドニーよ。お前に仏頂面や泣き顔は似合わぬ。笑え。ふわっと笑うお前が、もっ
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