第五話 INグレンダン(その3)
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りよくないもので。先日もクラリーベル様に打ち倒された門下生のケアが大変でしたから」
からかうような色の混じるクララに対し、お忘れになったのですか、と淑やかに微笑む女性から怒っている様な気配は感じ取れない。しかしそれを受けるクララは笑みを浮かべつつも明後日の方向を見ていることから事実なのだろうな、と傍で見ていたニーナは思う。
「それは兎も角、今日は珍しい人を連れてきたんですよ、ルッケンス夫人」
「クラリーベル様が人をお連れになること自体珍しいですが。……どなたかと思えばニーナ隊長ですか、確かに珍しい客人ですわね」
ルッケンスといえばニーナにも覚えがある。元ツェルニ武芸長ゴルネオ・ルッケンスとマイアスで会った天剣授受者サヴァリス・ルッケンスの生家で、グレンダンでも有力な武門だと聞いていた。
しかし、そのルッケンス夫人だというこの女性にニーナは見覚えが無かった。
その困った様子を見て取った女性は仕方がなさそうに苦笑する。
「判らなくても仕方ありませんよ、この姿でお会いしたことはありませんから」
その言葉に不可解に思うが、自身が覚えていないので少し気まずい思いをしているところで男の声が掛けられる。
「こんなところで立ち話をしていては皆の邪魔だろう。クラリーベル様……とニーナ・アントークか、珍しい顔だな」
その男はニーナもよく知った顔だった。
「ゴルネオ先輩、お久しぶりです」
ニーナが知るよりさらに肉体に厚みが増したゴルネオ・ルッケンスがいた。もはや先輩後輩の間柄ではないが親しんだ呼称がつい出てしまう。
「今更先輩後輩という間柄でもない、好きに呼んでくれて構わんぞ」
確かにグレンダンにいる数少ない知人の内の一人といえる。が、わざわざクララが自身をここに連れてきた理由まで判らない。
「ゴル、ごめんなさいね。すぐにお通しします」
女性のかけた『ゴル』という愛称がニーナに一人の人物を思い出させた。ニーナの記憶の人物でそう呼ぶのは一人だけだ。
「まさか……シャンテ・ライテ副隊長なのですか?」
語尾が疑問に持ち上がるのも無理はない。ニーナの知るシャンテ・ライテという人物はゴルネオの肩に乗るほどに小柄で、振る舞いも野生と称されるほど奔放だった。
「正解です。この姿になってからは小隊戦にも出ていませんでしたから、知らなくても仕方ないかもしれませんね」
だが目の前で微笑む麗人はニーナより背が高く、貴婦人と称されても可笑しくない空気を身に纏っている。
「ルッケンス夫人、という事はゴルネオ先輩と……」
「ええ、結婚しましたわ」
薄く頬を染めるシャンテ、記憶に残る姿と今の姿が一致せず激しい違和感に襲われる。
「それはおめでとうございます。ですが何故こんなに姿が変わったのですか?」
「それについては本人達もよく分かってい
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