第五話 INグレンダン(その3)
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吐くミンスの目がニーナを捉える。
「あの時の廃貴族持ちか、何故またここにいる」
「ニーナが私を訪ねて来たんですよ。貴方と違って私には友達がちゃんといますから」
事実三王家の当主ともなると友人というカテゴリーに分類される相手は極々限られる。
無論王として即位しているのでなければ臣下ではなく単なる家の大小である。とはいえその差が歴然としすぎていて当然相手からはそうは思われない。『仲間』はいても『友達』は決して多いとは言えない。
そういう中で堅物なミンスよりフランクなクララの方が間違いなく多いといえる。
「そんなことはどうでもいいが、何をする気だ」
「いえね、ニーナにグレンダンを案内しようかと。前来た時はそんな余裕ありませんでしたから」
前回はレヴァンティンとの決戦、前々回は拉致からのドゥリンダナとの戦いと観光できるような状況ではとてもなかった。
「そうか、なら好きにするといい」
あっさりと認めたミンスにクララの方が逆に驚く。
「あら、またグチグチいうのかと思いましたが珍しいですね。どういう心境の変化ですか? いつもこうだといいんですけど」
「大したことじゃない。どうせ今日は絶対にやらないだろう。だったら急かすだけ無駄で徒労だろうが」
「分かってくれてうれしいですよ。出来たら呼び出すのでその時に来てください」
諦念を抱いたミンスが踵を返し立ち去る。それを見送ったところで再びニーナに向き直る。
「それじゃ、改めて行きましょうか」
「いいのか、わざわざ呼んでいたという事は重要な事じゃないのか」
「いいんですよ、一日二日遅れた程度で変わるような事じゃありませんし、何かはもう解っているんです。形式的な書類は無くてももう準備を始めていると思いますよ」
「それでいいならいいんだが」
本人たちが問題ないとしているなら部外者であるニーナがこれ以上口を挟むべきことではない。
「それでニーナが行きたいところってどこです? あ、リーリンの所は別ですよ」
「ああ、それなら……」
「なあクララ、本当にここなのか?」
「勿論です。嘘ついて何になるんですか」
「いや……それはそうなんだが……」
目の前に広がるのは一等地にたたずむ広大な邸宅、その前に立つニーナは違和感を禁じ得なかった。
「ほら、ここに突っ立っていても仕方ないでしょう」
対するクララは当然だがそんな躊躇いなど皆無で躊躇なく踏み込んでいく。
正面の扉を開け放ち館の中に踏み込むクララを待っていたのは武芸者の女性だ。
「お久しぶりですね、メックリング夫人」
「ええ、クラリーベル様がいらっしゃるなんて何時ぶりでしょうか」
にこやかに言葉を交わす二人の後ろでニーナがクララの服の裾を引く。
「おいクララ、この女性は確か……」
「ええ、あの時狼面
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