第五話 INグレンダン(その3)
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あるため席が埋まっていることによる安心感は決して否定できない。天剣授受者の半数が死亡するという汚染獣の襲来があった後なのだ。空きが少ない方が安心できると考える市民が多くなることは自然であるし、ティグリスとデルボネが戦死する前はレイフォンを除いても十一人いる状態が長く続いており六人しかいないことに違和感を感じる者も多い。
「そんなに少ないのか?」
天剣の凄さはニーナもその身をもって知っている。身近にいたレイフォンはニーナに向けて本気を出すことは殆どなかったとはいえ、メルニスクの力を使いクララと二人がかりでやっと勝つことができた。
天剣最強だというリンテンスに至っては手も足も出ず、その卓越した技量にレイフォン以上にその差を思い知らされた。
「今は私含めて六人しかいませんから、丁度半分です。それとグレンダン出身じゃないことは気にしませんよ、なんといってもここはグレンダン、実力だけがものをいう世界ですから」
そんな超絶の武芸者が多く死んだ事にあの戦いの激しさが表れている。皆亡くなったのはニーナが来る前であったが。
「それでニーナ、そんなに気になるってことは天剣になる気でも沸いてきましたか?」
「いや、それほど亡くなったとは思ってもいなかったから驚いただけだ」
否定されても期待していなかったクララに失望は無い。逆に『天剣になる』とニーナが主張した日には呆然とすることだろう。
どこかに根を下ろすなら故郷であるシュナイバル、若しくは学園都市という性質上無理だろうがツェルニだろう、と。戦闘狂でもないニーナがグレンダンに永住しようとする理由が無いと思っていたからだ。
「よし、行きますよ」
作業を終えたクララが勢いよく立ち上がり扉へと向かう。
一歩遅れて続くニーナが通路に出たとき、廊下の向こう側から歩いてくる男性が声を掛けてきた。
「クララ、どこへ行くつもりだ」
「あら、ミンスじゃないですか。どうしたんです? 珍しいですね」
三王家が一、ユートノール家の当主たるミンス・ユートノールだ。グレンダンでの地位は女王に次いで天剣と同様に高いが、本人が王宮に顔を見せる頻度は決して高くは無い。
それは明確な役職に就いている訳ではないのが一つ、もう一つはクララや女王といった顔触れに振り回されたくないからだ。もっともそれが気休め程度にも意味があるのかというと微妙であるが。
何故なら二人ともそんな事に気を使うような性格ではないからだ。
「どうしたも何もお前が私を呼んだんだろうが」
それを聞いたクララは何かを思い出したように大きく頷く。
「ああ、そういえばそんな事もありましたね。でもミンス、また今度にしてください。今日はこれから用事があるんです」
忘れているにも関わらず悪いと欠片も思っていないようなクララに呆れてため息を
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