第五話 INグレンダン(その3)
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者なのに武芸者をやめるのですから」
武芸者の頂点が武芸を放棄する、ツェルニに来た当初のレイフォンのように誰も知らない場所ならともかくグレンダンでそれをやるのは困難だろう事は理解できる。
「それはわかりましたけど、それならいつ頃まで滞在するつもりです? あまり市民には知られない方がいいでしょう」
「レイフォンが長居したいとは思わないでしょう。私は別に用もありませんから」
気絶したままのレイフォンを放り出して戻っていったアルシェイラの代わりにクララが聞く。
「まあそうでしょうね。六年かけて学んできた結果がこれなんだから、あの子達に失望される前に出ていきたいんじゃないかしら」
かつてルシャに『孤児院の出世頭にして失墜頭』と評され、なおかつ孤児院の子供たちからもストップ安の評価を受け続けていたのが些か持ち直してきていた。フェリを連れてきたことで一部(特にアンリ)からは極めて高騰していたがこの様子ではすぐに再び落ち込むことはリーリンにとって容易に想像できた。
「まあそんなことがあってすぐに逃げるように出て行ったのよ」
二人から語られた事態にニーナも語れる言葉を持たない。
何とも言えない痛みを共有していると園の方から眼鏡をかけた金髪の女性が出てきた。
「園長、ちょっといいですか……って、あーっ!!」
リーリンを呼びに来たようであるその金髪の女性はニーナを見ると奇声を発しながら指を指し凍り付いた。ニーナはその女性に見覚えが無かった為、傍らの二人に助けを求める視線を送る。
「どうしたんですかミュンファさん、そんな大声を出して。みんながビックリするじゃないですか」
リーリンが孤児院の子供たちの方を見ながら窘めるように呼び掛ける。名前を聞いても覚えのないニーナが質問をする前に新たに男の声が響いた。
「どうかしたかさミュンファ、いきなり大声を上げて」
その男性は孤児院に隣接した建物から出てきた。腰に剣帯を下げた赤い髪の青年で特徴的なのは顔に入った刺青だろう。
「お前はハイア・サリンバン・ライアか?!」
「そういうあんたはニーナ・アントークかさ?!」
男の方にはニーナも見覚えがあった。サリンバン教導傭兵団の団長、廃貴族メルニスクを狙ってツェルニに現れレイフォンに対し揉め事を起こした相手だ。違法酒がらみで第十小隊との小隊戦の最中に乱入したり、武芸大会当日にフェリを人質にレイフォンとの私闘に及んだ事でニーナも少なからず関りがあった。
だがそれで女性の反応も腑に落ちた。サリンバン教導傭兵団の一員ならばメルニスクを宿し捕獲対象だった自身の顔を知っていて当然だ。ましてやここグレンダンは傭兵団発祥の地、その団員が居たとしても不思議ではない。
「あーいや、俺っちはもうサリンバン教導傭兵団とは関係ない。というか傭兵団自体とっく
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