第五話 INグレンダン(その3)
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いのだから先に自分の用事を片付けておきたい。
「クララ、今日は諦めてくれ。今度時間が合えばまた考えよう」
「いやです、ニーナが何時までいるかわからないから先にやっておくんです」
手合わせをしようとクララが強硬に主張するのには理由がある。例え今手合わせしたことでリーリンに会う前に次のバスが来たとしたらバスを遅らせても会っていくだろう。確とした目的地を持たず放浪するニーナだからリーリンに会うという目的を優先する。
しかし、リーリンに会った後では時間が在ったらという程度の手合わせの約束よりもバスの方が優先されるからだ。故にクララとしてはやれるときにやっておくというスタンスだ。ニーナと一対一ならできる可能性は高いがこの四人でできる可能性は非常に低い。
「いいからやりましょう、やれる時にやるんです」
ごねるクララに皆呆れてしまう。全員に僅かに有った少しなら手合わせしてもいいかな、という色が抜けていくのが互いに見て取れた。
「いいからクララ行くぞ、お前以外誰もやる気は無いからな」
ニーナがクララの襟ぐりを掴んで外に引きずり出す。
「それではまた、時間が有ればですがよろしくお願いします」
見送りに来たゴルネオ夫妻に暇を告げる。
「そうか、正直俺はそんな事にならないことを望んでいるんだがな」
「時間が合えばお相手致しますから、遠慮はしないでくださって構いませんよ」
心の底からというのが分かるゴルネオと、それをフォローするシャンテにルッケンス邸から送り出される。流石にクララも無理矢理抜いて襲い掛かるような真似はしない。
そのまま引きずって屋敷から少し離れるとクララも駄々を捏ねるのをやめた。
「仕方ありません、今日の所は諦めますから今度お願いしますよ」
「クララ……あれだけ拗ねた後では何を言っても格好つかないぞ」
ぐっと詰まるクララに次の行き先を告げる。
「それで次はいよいよリーリンの所か?」
「ええそうです、クライマックスです。さっさと行きますよ」
幾らかヤケクソ気味のクララを先導にグレンダンの街を行く、ふと見上げた空は幾らか雲が出ていていた。
「ここか」
「ええ、ここです」
二人の目の前には多くの子供がいた。それぞれが思い思いに走り、あるいは何人かで集まって遊んでいた。
「孤児院です。こういった施設はどうやっても無くなることはありませんしね、リーリンはここの院長ですよ。もともとリーリンやレイフォンも孤児院育ちでしたから、それを引き継いでいるわけです」
二人に気付いた子供が幾人か寄ってくる。
「あっクラリーベル様、先生に御用なの?」
「ええそうです、はいこれお土産ですよ」
道端で買っていたお菓子を渡すと奥に走っていく子供たち。
「結構親しげだがよく来るのか?」
「頻繁ではないけどと
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