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超能力のある杉の樹
超能力のある杉の樹
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してあった。排気ガスで段々と苦しくなってきた。思考もまともではなくなってきた。【閣下】と呼ばれていた私なのに……。
 数年間、我慢してなにごともないような姿で、すっくと立ってはいた。が、私の存在が邪魔になってきたのだろう? 土建屋が国道を通行止めにして、根に近いところを、特大のチエーンソーで切り始めた。私は、正直驚き、痛みは筆舌に尽くしがたく、わずかに残っている超能力を使い、関係者全員、即、ある者は心筋梗塞で、ある者は脳卒中で、ある者は交通事故で、退治してやった。近所の人は口々に、御神木の祟りだ、と噂しあう声は良く聞こえた。が、私には、積極的に攻める方法はなく、というより、太古の昔より先制攻撃をできない遺伝子が、邪魔をしているのだ。
 その後は何の変化もなく、四十年程経過した。しかし、西暦二千五十九年だと思うが、南南東から、大きな橋梁がこちらに向かい徐々に迫ってきた。
 多分、リニアモーターカーの建設が、私がそびえ立つ東北州にまで進展してきたのに違いない。
 当然、私の存在が邪魔になるだろう、という予感に打ち震えたが、何の抵抗もできない。
 巨大なクレーンで釣り上げられ、根も土からはがされて、野原に無造作に転がされた。
 しかも、ロボットアームの巨大な裁断機が、私の巨体を切り刻みだした。が、機械に超能力が通じるはずもなく、二千三百余年の寿命は風前の灯となった。激甚≪げきじん≫な痛さを感じ、ギィヤアー、ギィヤアー、ギィヤアー、ギィヤアー……と叫んだ。
 動けぬ仲間達が助けてくれないのは、良く承知しているが、それでも叫び続け……。



 ――完――
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