超能力のある杉の樹
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。ところが、昭和十七年のミッドウェー作戦に大敗を期し、以後、日本海軍は、負け戦を強いられた。
しかし、彼に対する畏敬の念に微塵も影響を与えない。なぜなら、彼は優れた軍人ではあったが、全能の神ではなかったのだから……。
さて、日本は敗戦国となったが、私が御神木として祭られてなのか、戦後急速に経済発展した。世界から、西ドイツと並んで脚光を浴びる国にまで、成長を続けたのだ。歴代首相の元で、私に言わせれば、乱開発と公害を撒き散らしながら、高度経済成長の道を突き進んで行った。
牽引役を担ったのが、戦後二〜五年して産まれた,いわゆる団塊の世代である。彼等は、幼い頃より過当競争の中で育った。今ではとても想像もできないほど、同じ年の人がいて、一クラス五十〜六十人、一学年十二〜十五クラスもあった。高校、大学進学率、競争率は跳ね上がり、T大を目指して猛勉強に励んでいたこの作家も、高三の終わり頃にはノイローゼ気味となった。浪人生活を二年送って、やっとT大の文1に滑り込んだのだった。
当時は、学生運動もすこし下火になっていたが、彼も念仏のように、安保反対、安保反対、安保反対、安保反対……と唱え、角棒と火炎瓶で、重装備の機動隊を相手に闘争した。でも、所詮、政府を倒せなかった。逮捕は免れたが、それが与えたトラウマに長らく苦しめられた。つまり、立ち直るのに、かなりの年月を要した。あれほど長く伸ばしていた髪もバッサリと切り、商社マンとして世界を股にかけて活躍し、サラリーマンとして役付きにまで登りつめた。定年となった今でも、関連会社でCEOとして、一万人強のトップとして君臨している傍ら、小説を書いているのだ。
また、【金の卵】と重宝がられた中学出卒業したての人達は、世界に比類なき熟練工になった。彼等の物作りが、日本の製造業を支えてきた。そのため、都市部への人口集中と農村部の過疎化を招来した。グローバル化の波に溺れまいと、年率二パーセント代のマイルドインフレーションを目指す国が、我々樹木へ及ぼす影響は計り知れず大きい。局所豪雨による地滑り、酸性雨、温暖化による気候変動……などだ。
しかし、これは地球規模での偏西風の蛇行に変化がないことが、原因だ。
化石燃料からでるCO2が由来の地球温暖化なんかとは関係なく、地球は、間違いなく氷河期に向かっている、と私は、確信している。
ところで、サルトルは即自と対自という対概念を導入した。これは物事のあり方と人間のあり方に分けて対比させたもので、即自である物事とは、「それがあるところのものであり、あらぬところのものであらぬもの<l‘?tre est ce qu’il est et n‘est pas ce qu’il n‘est pas>」であるとした。これは物事が、常にそれ自身に対して自己同一的なあり方
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