超能力のある杉の樹
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法を見つけて、治すのが一番いい方法だろう。でも、どこに心があるのだろう。重要なことなのに、今まで一度も考えたことなぞなかったのに、今気が付いた。でも、どんな対処法も見当たらないから、無視するのがこの場合、一番いい方法だろう。たかが地球の上での悩みに翻弄されだけだ。無限大の宇宙から見れば、とるに足らない些末≪さまつ≫な悩みだ。そう思うと、気が楽になった。自分自身を過大評価し過ぎていたのだ。もうこれからは、Que sera sera/ケ・セラ・セラを座右の銘にしよう。この文句は、スペイン語に由来するフレーズで「なるようになる」の意味だ。英語では「Whatever Will Be, Will Be」である。
その後、第一次、第二次世界大戦の世になった。志願兵、赤紙一枚でお国のためと言って出征してゆく兵士の守り神となった。当の兵士はむろん、隣組の人々、軍関係者達に二拍三礼を賜った。ところが、残念だが、私の持つ超能力の有効範囲は鹿児島までだ。しかも神の如く全能ではない。昭和十八・十九年以降南方へ従軍した人々の多くは、大本営の勇ましい活躍報道とは裏腹だった。補給物資を搭載した補給船団は、護衛艦一〜三隻のほとんど丸裸で、米潜水艦の標的となってしまった。船団は、ことごとく南方のエメラルドグリーンの海の藻屑≪もくず≫となってしまった。
その結果、孤立した兵隊達は、カエル、ネズミ、ミミズ、草の根……など、口に入るもの全てを食べざるを得なかった。それでもなお、上層部の命令通り戦おうとした。だが、圧倒的なアメリカ軍兵力の前では、小さな蟻ほどでの軍備しかなかった。しかもむごいことに、大半の兵隊達は、鬼畜米英と闘うこともなく、マラリア、赤痢,疫痢……などに襲われたのだ。果ては死人を食らえども、(お母さん)と言う元気もなく、見知らぬ地の泥濘≪ぬかるみ≫で、その生涯を終わらせねばならなかった。事実、今でも夜中になると、うなされるほど、私の心は痛むのである。
戦争と言えば必ず、昭和十八年四月、前線視察のためブーゲンビル島上空で,アメリカ陸軍航空隊のP−三八戦闘機に撃墜され戦死された真の武士。山本五十六≪やまもと いそろく≫元帥を尊敬の念とともに、彼が行ってきた優れた業績に、想いを馳せてしまうのは、私だけではないだろう。彼は、明治三十七年、日露戦争時、装甲巡洋艦で人差し指と中指を失ったが、泣き言一つ言わず軍務に復帰し、海軍大学校を出た後、第二次世界大戦の前に中将として連合艦隊司令長官に就任した。日独伊の三国軍事同盟に異を唱え、アメリカとの国力差も充分理解しており、日米開戦に強く反対をしていた。
が、皮肉にも、第二次世界大戦遂行の任を仰せつかり、短期決着を見込んで航空機に力を注ぎ、パールハーバーアタック(真珠湾攻撃)を成功させ、大東亜戦争初めを日本軍有利の戦況を創り出した
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