超能力のある杉の樹
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類から進化した爬虫類は、急速に多様化した。その前にいた両生類に代って世界を支配し始め、古生代半ばから中生代前半にかけては哺乳類型爬虫類が、中生代には恐竜、翼竜等が、新生代からは鳥類や哺乳類が繁栄した。恐竜が我が物顔で地上をかけ巡る頃、我々植物は裸子植物が大半であった。白亜紀には被子植物も登場した。
中生代より栄えてきた我々の花粉が原因で、最近の人類は軟弱であるせいか、花粉症とやらに苦しめられているらしい。
しかしながら、建築用木材として我々の仲間を進んで植林したのは、誰あろう人間だ。時を追う毎に、林業に携わる人間は、減少し、しかも高齢化している。繁栄の象徴たる子孫の聖なる命を奪うばかりか、森林荒廃で様々な問題を惹起≪じゃっき≫している。森林は、人間の未来を育むかけがいのない財産だ。そういう認識をスローガンとして、最近では、まだまだ少数ながら、企業が間伐、植林……などに乗り出し始めた事実に、もしも私に手があれば、拍手喝采しているだろう。
今後の活動には、大いに期待しているところだ。
風の便りで聞く、樹齢三千二百年以上の屋久島で栄えている縄文杉には、正直負けてはいる。多分、私は、この世に生を受けて、二千五百年ぐらい経過しているだろう。
幼い頃、他の樹木に光合成に不可欠な太陽エネルギーを奪われないよう、闘争に明け暮れしていたのだ。しかも、我々、杉は針葉樹で根を深く張らない。そのために、養分を周りの木々に取られないように必死で頑張った。しかも、背丈を伸ばすことに、精一杯の努力を傾注したのだ。
年輪は、自分で見ようにも見ることはできない。
多分、百歳頃に自我と共に、周りの生き残った同類を観察する余裕に目覚めた。文字通りThe survival of the fittest(最適者生存)の優れた見本のようで、誇らしくさえ思っている。
生まれてから今までの記憶を遡及すれば、正確な樹齢は分かるのだ。確か弥生時代後期に生を受けた私の根元には、幸いにも、墓である伸展葬の人間達が埋葬された。彼ら彼女らの死体が養分となり、肉と脳みそを美味しくいただき、大きく成長できたことには、今でも感謝はしている。
したがって、これだけは言っておきたい。人間には本来何の恨みもなく、それどころか衷心よりありがたく思っている、と。
弥生時代はもちろんのこと、古墳時代、飛鳥時代、奈良時代、平安時代、鎌倉時代、南北朝時代、室町時代、戦国時代、安土桃山時代、江戸時代、明治時代、大正時代、昭和時代、平成時代……などの各時代を生き抜いてきた。この期間に、様々な知識と教養を身につけてきた努力は、我ながら、賞賛に値すると自負している。さらに、各種の超能力も同時に身に付ける訓練にも勤しんできた。
つまり、Precognition(予知),Clair
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