暁 〜小説投稿サイト〜
超能力のある杉の樹
超能力のある杉の樹
[1/8]

前書き [1] 最後
 私は、植物界、裸子植物門、マツ綱、マツ目、ヒノキ科、スギ属の杉である。
 威風堂々として、優れた才能が横溢≪おういつ≫した、我ながら惚れ惚れする存在だ。
 人間どもの驚嘆と畏怖≪いふ≫、さらには信仰の対象とさえなっている。単なるそこらに群生している、ありふれた情けない存在を晒≪さら≫している杉ではない。思考能力のみならず、意思と優れた超能力を持つ特殊な存在だ。この世に生を受けて以来、約二千五百年経過しており、ご神木と崇められる由緒正しい存在でもあるのだ。弥生時代から現代まで、様々な勉学と世間のできごとを観察してきた、好奇心に溢れる老木でもある。
 私が、自分自身に課した研究テーマは、宇宙物理学で「ブラックホール理論」と呼ばれているものだ。電磁波と粒子の性質を合わせ持ち、一秒間に地球を七.五回も回転できる光さえも取り込まれて、ブラックホールから逃げ出せないのだ。今なお世界中の学者が、解明しょうとしている研究だ。銀河の衝突により、星形成が起って密度の高い星団ができる。が、これら重い星の寿命は短い。ところが、最新研究によると、超新星爆発では、最大で太陽の百倍の質量を持つブラックホールができる。さらに、これらが集まって、中間質量のブラックホールが星団内に生まれ、銀河中心に集中し合体して、大質量ブラックホールが誕生するらしいのだ。
 ブラックホールと反対にある概念は、ホワイトホール (white hole)である。ブラックホールは事象の地平線を越え、飛び込んでくる物質を外部へださず、全てを吸収する領域である。
 だが、ホワイトホールは、事象の地平線から物質を放出するのだ。

 私達、杉の木は日本固有の種であり、中生代から、南は屋久島から北は東北まで栄え、しかも、人工的に植林されたおかげで、個体数を増加させてきた。
 私は弥生時代後期に生を受けた。理由は全く分からないが、誕生して約百年後から、全国にいる仲間より各種の情報を仕入れる能力を、身に付けた。私は進化の過程における、一種のミュータントに違いない。DNAあるいはRNA上の塩基配列に、物理的変化が生じることを遺伝子突然変異と言う。染色体の数や構造に変化が生じることを、染色体突然変異と言う。突然変異の結果、遺伝情報にも変化が表れて、変異を生じた細胞または個体を、突然変異体(ミュータント, mutant)と呼ぶのである。
 人間が、ヒト科として現在のように繁栄してきたのは、たかが一万年前頃からである。だが、約三十五億年前にはラン類が出現し、二十億年前頃に地球にオゾン層が形成されたため、地表に達する有害な紫外線は減少した。そこで、我々の祖先は陸上進出を始めた。我々のような杉が誕生したのは、進化論的に考察しても何ら不思議ではない。
 アンモナイトが繁栄を謳歌≪おうか≫し、三億年前に両生
前書き [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ