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恐怖を味わった高校生
恐怖を味わった高校生
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しょう、私の苦悩を」
 文章で書けば長いけれど、ほんの一瞬だった。……勉の脳に、石原さんの言葉が飛び込んできたのは。気味の悪い話であるが、真面目な石原さんが嘘をついているなんて! そんなことは、とても信じられない。きっと、きっと、精神に異常を来しているに違いない。精神病者は、自分が精神を病んでいるのを自覚出来ないからこそ、精神病者だ。勉に話すよりも、心療内科あるいは精神科のお医者さんに語るべき内容だと思う。
 先程の奇怪な老女が、チョコレートパフェを、今度は静かに勉の前に置いた。
 アイスクリーム、ホイップクリーム、チョコレートソース等が、細長いグラスの中に入っている。上には見栄え良くメロンとバナナを載せているのだ。石原さんの前には、陶器で出来た黒い特大マグカップを置いた。特大マグカップの中には、並々と注がれた独特の臭いがする液体が入っている。コールタールらしきドロリとした液体だ。勉の鼻腔≪びくう≫を、強烈な匂いが襲った。吉田さんは、さも誇らしげに言った。
「さあ、遠慮しないで召し上がってね。……とっても、素晴らしいお味だわよ!」
「それでは、遠慮なく、いただきマウス!」
 ゾロゾロと集まってきた例の大きなゴキブリ達を、勉は、運動靴が汚れてしまうのを覚悟で、力を込めて踏み潰した。
 店内の様子を見る振りをして、眼の隅で吉田さんがとる行動を、つぶさに観察した。
 吉田さんは右手でコールタールを掻き混ぜた。そして、おもむろに、猛烈な悪臭が鼻をつく、既に半分以上ミイラ化しているドブネズミの尻尾を、高々と持ち上げた。ドブネズミの頭から順に、さも美味しそうにグシャグシャと、身震いするような音を立てて頬張った。歯も、唇の周りも真っ黒にして……。
 勉の前にあるチョコレートパフェのチョコレートに、フォークを突き刺した。すると、ジヤージヤージヤージヤー……と耳障りな音がする。小型のチャバネゴキブリの群れが、器から逃げ出したのだ。メロンに見えたのは、大きな蛾のさなぎだ。さなぎは、無数の短い足でノロノロと逃げ出した。バナナは、得体の知れない生き物達だ。それらが、羽を出して羽ばたき薄暗いランプシェードに跳びついた。何年、いや何十年もの間、溜まっていただろう大量の埃を、頭上に撒き散らしたのだ。ホイップクリームの中には、大量のウジ虫どもが、ゾロゾロとうごめいている。     なぜかだか分からないが、もう、吐き気がしなくなった。

 だが、勉の恐怖と怒りは頂点に達していたのだった。
 無造作に、マガジンラックに置かれていた埃まみれの雑誌をつかんで、何度も何度も繰り返し、力を込めてテーブルの上を叩いた。勉の行動を無視して、吉田さんは、さも美味しそうに二匹目のドブネズミを齧≪かじ≫っている。
 ドブネズミは、頭蓋骨を割られて脳味噌を垂らしている。ドブネズミの空洞に
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