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恐怖を味わった高校生
恐怖を味わった高校生
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……チョコレートパフェはどうかしら?ここのは、とびきり美味しいわ! 私は、いつものをお願いね。……ママ、ママ、聞こえたかしら?」
 煤で汚れた厨房から、白毛混じりで年齢不詳の老女が緩慢に近づいてきた。老女は、体を右に傾け、ガバガバの運動靴を履いているので、歩くたびに数センチは積っていると思われる床の埃を舞い上げるのだ。しかも、今にも倒れそうなヨロヨロとした足取りだ。老女は、原形を留めない程に歪んだトレイに、水の入ったコップを載せている。目の前にある、汚れている木製テーブルは、古色蒼然としていて、傷まみれだ。
 耳が痛くなる程の音を立てて、所々黒ずんで欠けたガラスコップを四杯置いた。
 かつては、薄水色だっただろうコップ半分ほどの水が、黒ずんだ木製テーブルの上だけでなく
 床にも飛び散った。しかし、老女は、そ知らぬ顔をしている。片方の眼だけが、ガラス玉をはめ込んだような虚ろな光を不気味に放っている。勉は、その眼を見て心臓の動悸が強くなり息苦しく感じたのだ。しかも、老女の体から発する臭いは、ヘドロ以上の悪臭である。彼は、思わずたまたま持っていたハンカチで鼻と口をふさいだが、吉田さんは平然としている。舞いあがった埃が、彼の眼を襲ったので、瞬きと涙で防戦していた。
 老女は、押し黙ったままトレイを左脇に挟んだ。そして、クルリと素早く向きを変え、厨房の方へ帰って行く。何やら念仏をブツブツと唱えながら……。彼は、老女の痩せて貧相な後ろ姿をボンヤリと見ていた。が、突如、不可解な疑問が脳裏に浮かんだ。
(なぜ、二人しか座っていないのに、コップを四つも置いていったのだろう? 氷が浮いていない生温い水だけが入ったコップを……)
 だが、瞬きをした瞬間、勉には見えたのだ。吉田さんの隣に、両目が胸元まで落ち体が半分以上溶け出した異様な姿の人間が、座っている。皮膚が溶けて赤い筋肉組織が露出し、かすかに骨すら見えている。勉の隣には、すでに骨だけになっていて、クモの巣に覆われた骸骨が座っている。二人とも美味しそうに生温い水を一気に飲み干し、満足げに椅子の背にもたれているのだ。
 気味が悪いが、無視することにした。
(二人の死人は、何の目的があってここに座っているのだろう?)
 ……勉の思考は、ここで唐突にさえぎられた。吉田さんのなせる超能力だろうか? 彼女は、右側が少し上に歪んでいる口を動かさないで、勉の脳に直接響く【言葉】で語った。勉と同じような超能力を使った。自分の想念を他者の頭脳に進入する超能力が、吉田さんには備わっているらしい。
(きっと、吉田さんは、自在にテレパシーを使える超能力の持ち主に違いない。同時に、勉にもテレパシーを「言葉」として認知出来る超能力を持っているのを再確認したのだ)
「私にも、貴女と同じ男の子がいたわ。仕事を終え、買い物を済ませて家に
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