暁 〜小説投稿サイト〜
鎮守府のみかんの木
3.夏
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
中から着地していたのが気になったが……それに何か意味があるのか?

 ほどなくして、変態は私の前に再び姿を表した。

――ヒヤァァァアアアアアアア!!!

 こんな具合で世紀末色が濃い雄叫びを上げる、緑色のプラスチックの、ぞうさんジョウロを片手に。

「貴公。土がそんなに乾いていると、さぞ喉が乾くだろう。このぞうさんジョウロで俺が貴公に水をやろう」

――俺にびしょ濡れにされたいヤツはどいつだぁああ!!!
  ヒヤァァァアアアアアアア!!!

 ぞうさんジョウロの叫び声は、恐らくこの変態には届いていないのだろう。朗らかな表情のまま、変態は私の頭のてっぺんから、ぞうさんジョウロで水をかけてくれた。

――どうだ!!! 冷てぇか!? 冷てぇか!?
  ヒャッハァァアアアアアア!!!

 今日はお日様がいつも以上にやる気を振り絞っていて、とても暑い。そのためこの変態がかけてくれる水の冷たさが心地よく、私の身体を伝って地面に落ちる水が、私の喉を潤していく。

――ソラールァあ!! かけてやれ!! もっとだ!!!
  こいつを水浸しにしてやろうぜぇぇぇぁぁあああ!!!

 ぞうさんジョウロのロックな叫びは耳障りだが……それにしても心地よい。乾いた私の身体に、変態がかけてくれる水が静かに、心地よく染み込んでいく……それに、この暑さだ。ひんやりとした水がとても心地いい。

「ぉお! 貴公!!」

 不意に変態が声を上げた。何事かと思ったが……

「心地よさそうな貴公の様子に、太陽が祝福を施してくれたぞ! 虹だ!!!」

 変態がひときわ嬉しそうに、私にそう教えてくれた。見ると、変態ソラールがぞうさんジョウロでかけている水のその向こう側に、七色に輝く美しい虹が見えていた。

 照りつけるお日様の眩しい光の中で、キラキラと輝くぞうさんジョウロの水しぶき……そしてその向こう側には、輝く虹のアーチ……美しい。この季節にしか見ることの出来ない美しい光景が、私と変態ソラール、そしてぞうさんジョウロの前に、広がっていた。

「太陽よ……このような美しい奇跡の光景を俺たちに見せてくれたこと、感謝する」

――どうだテメェエ!! 俺様の無慈悲な水攻撃で、
  テメーは水浸しだぜヒャァァアアア!!!

「そして、貴公にも感謝する。貴公の摘果をさせていただいたおかげで、このような奇跡の光景を堪能することが出来た。……みかん。ありがとう」

――どうだ!? 涼しいか? 涼しいか!?
  ヒヤァァァアアアアアア!!?

 交互に私に言葉をかけてくれる変態ソラールとぞうさんジョウロ。そんな彼らの周囲には、先程ぞうさんジョウロがぶちまけていたシャワー状の細かい水滴が漂っていた。

「太陽に愛された貴公だ……そ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ