侍娘-クリスティナ-part4/悩む戦士たち
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これなら行けるような気がする、そんな予感と期待が膨らんだ。
『力になれて良かったよ』
画面の向こうでムサシの笑みが見えた。
「そういえば、そっちの様子はどうですか?」
『僕は今、ロイヤル・ゾウリン号やジャンバードの起動方法について調べているよ。可能なら、これらを再稼働出来るようにして欲しいと頼まれてたんだ』
元々シュウに頼む予定だった改造ロイヤル・ゾウリン号、ジャンバードの解析はムサシが引き継いで行うことになった。今のムサシは独自に起動・操縦方法を探り続けている。
『ただ、今の状況を考えると仕方ないところもあるけど、兵器を再稼働させる…正直僕は避けたかったな』
ムサシは心苦しげに言った。サイトはムサシがそう言った理由もわかる。彼は怪獣保護の使命を好んで背負っている。元より戦いが嫌いな、かなりの平和主義者でもある。戦って命を奪う兵器を作るなんて、できれば眠らせたまま名前をしておきたいと思っているに違いない。
『ごめん、ちょっと愚痴になっちゃったね。そっちはどうだい?クリスティナ殿下のことは聞いたけど、黒崎君とティファニアちゃんはどうしてるかな?』
「シュウはテファたちのお陰で、少しだけですけど表情が明るくなり始めてます。ちょっとだからまだ暗い奴に見えますけど…」
『そっか、でも今はそれだけでも十分だよ。なんにせよ、彼のことを知ることができて良かった。でも、友達に暗い奴なんて言い方は感心しないぞ』
ムサシもこの時、サイトたちが魔法学院に戻る前に、シュウの過去について聞き及んだ。当然、まだ若い人間が抱えるには重すぎて、そして悲しいと思えてならなかった。人をあらゆる脅威から守ろうとする、そういう意味ではシュウはウルトラマンとしての使命を全うしている、と言えるだろう。だがそれ以前に彼は人間だ。人としての人生もある。それに伴って結ばれた他者との絆もある。それを大事にしてこそだと思えるが、これまで無茶をし続けるその姿から、彼はそれらどころか自分のことさえ蔑ろにしている印象があった。しかし、辛い過去を誰かに話したことで、追い詰められた彼の心が少し軽くなったようなら一安心だ。
『かといって、油断はできないこともあるけどね』
「油断できないこと?」
『アルビオンへの侵入するための任務の時、君も見たはずだ。彼が怪獣たちと戦ったときに見せたあの黒いオーラを』
サイトは、はっとなった。あれが何かはわからないが、確かにあの赤黒いオーラについては自分も何か危険な臭いがすると見ていた。
『彼はこれまで、自分の過去を償うため、自分を罰するために、ウルトラマンとして人々を守ってきた。償うこともできない状況に陥れば、彼はその時現実に対して理不尽さと怒りを覚え、負の感情を爆発させる。おそらくあのオーラは、彼の心に反応して溢れ出るんだ』
「やっぱ、ヤバイんですか?」
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