侍娘-クリスティナ-part4/悩む戦士たち
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うはいかなくなる。リシュは見ての通り子供で知識も豊富には見えない。誰か手を貸してくれそうな人がいればいいのだが、と周囲を見渡す。
ふと、一人誰かが本を読んでいるのが目に入った。
青い髪の小柄な少女。確かタバサという名前で、この学院の生徒だ。無口でいつも本を読んでいるという印象だ。その印象どおり、この日も彼女は静かに本を読んでいる。
ふと、彼女はシュウとリシュの存在に気づいたのか、本の文面からこちらに視線を向けてきた。
「…何か用?」
「あ…ああ。俺はまだこの世界の文字を完全に読めなくてね。それに魔法のこともまだよく知らない。だから、初心者でも読めそうで、それでいて魔法のことを書いてる本を読みたい。この世界の文字も、ちゃんと習得しておきたいんだ」
タバサは、シュウの口調に違和感を覚えた。彼とはほとんど言葉を交わしたことはないが、ある程度の特徴は知っている。ルイズの使い魔と同じ別の世界から来た若い男。ただサイトと異なり、彼は表情も感情も豊かではない。初対面の時からまったく笑みを見せなかったが、単なる無表情な人間よりもっと冷たい印象を与える仮面のような表情を見せていた。
「…タバサ?」
「ッ…なんでもない」
タバサが黙り込んだのを見て、シュウは邪魔だと思ったが、いったん本を閉じてこちらの話を聞いてきた彼女を見て、それは杞憂だったと悟る。彼女が杖を振るうと、シュウたちがちょうどいる読書スペースより3札ほどの本が本棚から飛び出し、ひとりでに浮遊してシュウの手の中に収まった。
「この本ならお勧め」
読書好きなだけあってタバサは図書室の本をある程度把握しているようだ。
ちょっと本の中を見てみようと、一冊開いてみる。意外にもそれは絵本だった。やはりハルケギニア文字で文面が刻まれている。だがシュウが予め覚えていた文字の大半で簡単な文章で記載されている。絵本なので、同時に絵のお陰で内容がわかりやすい。絵本だから本来は子供用ではあるだろうが、かっこ悪いからって難しい本を求めたらどこかで詰まってしまうので、これでいいだろう。
「その子にも、たぶん読めるはず」
「リシュにも気を使ってくれたのか。助かる」
「お姉ちゃん、ありがとう」
「…別にいい」
笑みを見せない者同士。タバサは内心、シュウと自分がどこか似たようなものがある気がしていた。そう思っていると、リシュはタバサに近づいてきた。
「ねぇ、お姉ちゃんの名前なんていうの?」
「…タバサ」
「タバサ…じゃあ、サッちゃんって呼ぶね!」
「…!」
思わぬあだ名をつけられ、さすがのタバサも驚いたのか、わかりにくい反応ではあったが目つきに変化を見せた。
「…すまない。悪気は無いと思うんだ」
「…いい、ちょっと驚いただけ」
平静さを装うかのように、タバサは再び本を開き、その世界に飛び込んでいった
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