夜怪盗
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いても次の当主はお前なんだよ。そして俺は『奉』だ。お前の保護者じゃあない。お前が契約を切ると云えば切るし、その後の事は知ったこっちゃないんだよねぇ…決めるのは全部お前だ」
云いたい事を云い終えると、奉はすい、と踵を返した。
「夜盗怪ってな、実は妖じゃねぇよ、只の人攫い…人間だ。人であれば迷いもするし、間違いもする。そもそもお前の先祖が犯した最大の間違いの尻拭いを、お前らは押し付けられてんだよ。今更お前がちょっとくらい間違えても大勢は変わらないんだよねぇ……そうだ、結貴。その荷物は鴫崎に持たせろ。お前はしばらく、俺に近づくな」
傍らに転がる荷物を、鴫崎が抱え上げて俺に頷いてみせた。
「……しばらく、ここには来るな」
声だけが聞こえた。…もう、洞の辺りに居るのだろう。
「しばらくって、どれくらいだ」
「そうだねぇ…この辺に桜が咲く頃まで」
「―――分かった」
俺は縁ちゃんの肩を軽く叩き、踵を返した。
参道脇の藪の奥に、福寿草が咲いている。あれが咲いてから桜の季節まで、どれ程だったか。少し後ろを歩いている縁ちゃんが、おろおろしている気配を感じた。いつもはっきりものを云う彼女にしては珍しい。俺はというと、何故かとても昔の事を思い出していた。酷い目に遭ったが、どこか懐かしさを感じていたというか…。
いや、思い出していたというよりは『既視感』というほうが近いだろうか。
もしも奉が云うように、俺が奉が転生する度にいつも傍にいる何かなのだとしたら…俺は多分。
はるか昔、奉の呪いに殺された事がある。
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