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霊群の杜
夜怪盗
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の剣は両刃なのだ。だからだろうか、振り下ろす動作よりも、左右に薙ぐ動作が多い。それは斬った人魂の残光をまとわりつかせたまま正円の弧を描き、太古の奇妙な舞踊のように草原を舞う。…俺も、見惚れた。
「もういいか」


羽織の中で、奉の掌が動いた。俺達の周囲を覆い尽していた草原が掻き消え、そして…そこは元の、薄暮の石段だった。


「…くそ、何だったのだ今のは」
奇妙な刀剣はいつしか、島津の手から消えていた。薄暗くなった石段の、鳥居が切れるあたりに、奉はまだ立っていた。
「縁」
戦場の余韻に浸るように深く息を吐きながら、奉が呼びかけた。
「お前が屋敷の『子供達』を攫い、何処かに託していることは知っている」
縁ちゃんの肩が、びくりと震えた。その顔は薄暮のせいか、よく見えない。
「お前は『奉』と玉群の契約を切る。そういうことでいいのだな?」
煙色の眼鏡を通して、奉が縁ちゃんを見据えているのが分かった。縁ちゃんは顔を上げない。俺は…ただ、居場所がなかった。縁ちゃんの思惑は最初から、この祟り神には筒抜けだったのだ。縁ちゃんは一瞬だけ戸惑うような視線を俺に向けたが、すぐに反らした。
「お前がこの契約について、どう解釈しているのかは知らないがねぇ…」
この契約はお前が思っているよりも、複雑に出来ているんだよ。そう呟いて、奉は今しがた、人魂が現れた参道脇の藪を指さした。
「少しだけ、結界を切ってやった。今お前が視たのと同じ1000年ものの怨念が、この奥で無数に群れ飛んでいる。それが、玉群を滅ぼすものだ。お前が漠然と考えているような、穏やかで緩やかな『終わり』じゃあないんだよ」
「でも私は…!!」
「お前が屋敷から攫い続けている『子供達』。あの子たちはな」
―――玉群を守るための、人柱よ。
「…酷い」
「万が一、契約の終了や『奉』の消滅によって結界が切れた時、あの子達には解き放たれた怨霊達から玉群を守るという役目があった。その為に、この場所に留まらせていたのだ。家への執着と俺への恨みを糧にしてな。そしてどういう形にせよ、彼らは解放される。この家の人間に害を及ぼさずに契約を切りたければ、子供達を逃がすべきではなかった」
……なんということだ。
子供達の犠牲は契約の副産物ではなく『保険』だったのか。1000年を越える時間をかけて、南条の血を引く子供達を人柱として集めておき、契約を切る時、家を守らせる、という。
「少し人柱が減ったのは心もとないが…今なら選べるぞ、縁。子供達を留めて契約を切り、家を守らせるか?それとも子供達を逃がし、契約は続けるか?…それとも子供を逃がし、契約を切るのか?自殺だぞそれは」
くっくっく…と奉が低く笑う。思わず、傍らに佇む縁ちゃんを抱きしめていた。…なんてむごい十字架を、こんな子供に…!!
「お前が玉群を
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