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霊群の杜
夜怪盗
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だった。…久しぶりだ、奉のする事で寒気を催すなど。思わず、口をついて出た。
「……何をした!!」
叫ぶより先に、参道脇の薄暗がりから呪いを帯びた色彩の光が数体、縺れあいながらまろび出て来た。それは周りの草木をじりじりと焦がしながら高速で縺れ、周囲を不規則に飛び回り始めた。
とぷり、と陽が沈んだ。
いや違う、陽が消えたのだ。膝のあたりまで埋まるような草原の只中に俺達は、居た。短い悲鳴と体温が、俺が一人ではないことを教えてくれた。だが。
「信じられん…!!己の妹が居るこの場所で、何故結界を解いた!?」
島津が上ずった声をあげた。
やはり、そうか。ここは嘗て俺が迷い込んだ、戦場が火を閉じ込めた結界だ。
「だから云っているだろうが。俺は、南条じゃねぇんだよ」
ぽう、と奉の手元に灯りがともった。あの日も持っていた、妙に明るい提灯だ。俺は背後で震える縁ちゃんの腕を掴むと、奉の近くに走った。
「ねえ、ここどこ!?」
「玉群が奉との契約で閉じ込めている怨霊の結界だよ。話しただろう」
「……これが!?」
縁ちゃんが息を呑むのが分かった。走る縁ちゃんの足元を人魂が掠めた。きゃっ、と短い悲鳴をあげて、縁ちゃんは立ち尽くした。その小さな声に反応した人魂が、そっと、縁ちゃんに照準を合わせた……。
「こっ…こんな幼い女子をこんな戦場に…!この、人でなしが!!」
島津、いや鴫崎の巨体が矢のように奔った。いつの間にかその手に現れた奇妙な…日本刀とはまた違う形の刀剣が一閃、縁ちゃんに狙いを定めた人魂を両断した。
俺は目を見張った。剣道でもフェンシングでも見たことがないような奇妙な太刀筋…彼が持つ奇妙な剣で戦う為に練り上げられたような、未知の戦い方だ。背中にぞくりと冷たいものが奔った。
「くくく…視たことがないねぇ、こんな太刀筋」
奉が、その目を細めて笑っていた。その目は爛々と、妙に熱を帯びた光を放つ。煙色の眼鏡を通しても抑えきれない程、奉はそう…高ぶっている。剣にまとわりつく人魂の残滓を振り払い、島津は再び剣を水平に構えた。
「よく見ておけ、結貴。あれは遠い古代、滅びた剣術の一種よ」
「…滅びた?」
「まだ一般的な刀剣が両刃だった頃のねぇ」
奉は顎に指先をあて、傍らに居る俺や縁ちゃんのことなど忘れ果てたように島津の動きを目で追う。
「鎌倉時代…武士の台頭により戦乱の世を迎えた頃。剣術も刀剣も爆発的な進化を遂げた。その進化のうちに名も知られず滅びていった剣術や刀剣が数多あった。お前らは勿論、俺も知るよしもない…それが1000年以上、結界に閉じ込められていたのだ。絶え間ない闘争で練り上げられた究極の剣技…」
美しいねぇ…そう呟いて奉がほう…と深いため息を吐いた。
「―――ああ!!」
あの剣にずっと感じていた違和感の正体が、ようやく分かった。島津
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