第五十話
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―海上―
「いやー、久しぶりに間宮さんの飯食えんぜー。」
摩耶さんは軽い足取りでスピードを更に上げていた。鎮守府を出発したのが一昨日。そこからトラック基地まで移動して、今度うちに着任する艦娘をお迎えすると言うのが、今回の作戦内容だった。
でも…………。
「まさか、プリンツちゃんだとは思わなかったよ。」
私は、隣を移動している金髪の女の子に話しかける。
彼女は、プリンツ・オイゲン。ドイツの重巡洋艦で、世界で初めての、『帝国海軍以外の軍艦が元となる艦娘』だ。当然、『始祖』だ。
元々、私とプリンツちゃんは殆ど同じ時期にこの世界に産まれて、最初の一ヶ月は呉で過ごしてたけど…………その後、プリンツちゃんはドイツに近代化改修を受けに行った。今日はその帰りだ。
「うん。私も、春雨たちと会うの、楽しみにしてたよ。それはそうと、ドイツ語、上手くなってたよ。文法の間違いも無かったし。」
「そ、そうかな…………えへへ。」
千尋さんを誉められた気がして、嬉しくなってしまった。
…………そうだ、もうちょっとで、千尋さんにも久しぶりに会えるんだ。そう思うと、摩耶さんみたいに足取りが一段と軽くなった。何て言ったって、今日からプリンツちゃんも一緒なんだ。
「あら、春雨ちゃん?ハートマークが出てるわよー?」
「お、ホントだ。どんだけ帰るの嬉しいんだよ。」
「んー、バカップルは見るのもやるのもめんどいしなぁー。見えないとこでおなーしゃーす。」
と、後ろを付いてきていた愛宕さんと摩耶さんと望月ちゃんがそんなことを言ってきた。
「ふぇ!?べべ、別に、千尋さんに会えるからとか、そんなこと一切思ってないんですからね!?」
「…………へー、千尋くんねー。その人が、噂の男の艦娘?それで、春雨の恋人と。挨拶しなくちゃね。」
あ、墓穴掘ったやつだねこれ。
「いや、待ってプリンツちゃん!まだ恋人じゃないから!」
「…………まだ?」
「〜っ!!」
私は思わずその場にしゃがみこんでしまった。この焦る癖どうにかしたい。
「あらあらー、ふふふっ。」
「おう、アタシは何時でも応援するぜ?」
「…………まぁ、泣かれるのも後味悪いし、がんばー。」
…………さっきから、望月ちゃんの台詞にトゲを感じる。愛宕さんと摩耶さんはニコニコしてるし、もう泣きたい。
「うぅ…………いーもん!絶対そうなるもん!そうなってやるもん!」
最早やけくそになってきた私は、みんなを見上げながらそう言った。みんなの生暖かい目が突き刺さるようだ。
「へーへー。ま、それもこれも帰ってからだ。」
摩耶さんはそう言うと
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