330部分:第二十五話 強い一歩その五
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第二十五話 強い一歩その五
場は沈黙に包まれた。誰も何も言えなくなっていた。二人もその場に立っているだけになってしまった。しかし、だった。やがて。
義正の父がだ。言った。
「わかった」
「わかった?」
「そうだ、わかった」
こうだ。我が子達に言ったのである。
「御前達のことはわかった」
「僕達のことが」
「そうだ、わかった」
こう言うのである。
「二人で生きていくのだな」
「そうしていきます」
「病と共に」
労咳のこともだ。彼は言ったのだった。
「そうして子を産み育ててか」
「そのつもりです」
今度は真理がだ。彼に答えた。
「決めました。もう」
「決めたか」
ここまで聞いてだ。まただった。
彼は言った。こう。
「それがわかった。それならだ」
「それなら」
「そのまま歩くのだ」
二人を見据えてだ。そうしてだ。
彼はだ。義正と真理に対して言ったのである。
「いいな。二人で歩いていくのだ」
「そうしていいのですね」
「御前達が決めたことだ」
それが理由だとだ。彼は言う。
「それならだ。御前達が望む様に進むのだ」
「有り難うございます」
そしてだ。次にはだった。
白杜家の総帥、真理の父もだった。二人に対して言った。
「私も同じだ」
「お父様も」
「そうだ、同じだ」
義正の父を見て。そうしての言葉だった。
「同じだ」
「左様ですか」
「そうだ。同じだ」
こうだ。真理に顔を戻して話す。
「御前達は勇気を以てその二つのことを決めたな」
「はい」
真理は今度は己の父に対して答えた。
「その通りです」
「勇気があるならだ」
それならばだというのだ。彼は二人に言うのだった。
「その勇気を失わずにだ」
「そうしてですね」
「生きていくのだ。わしが言うのはそれだけだ」
「お父様・・・・・・」
真理は泣きそうな顔になった。しかしだ。
父に言われた勇気という言葉を思い出しだ。そしてだった。
それを止めた。それからだ。
義正を見てだ。こう言ったのだった。
「あの、では」
「そうですね」
義正も応えて。そのうえで。
まただ。言ったのだった。
「これからも二人で」
「生きていきます」
今度はだ。二人の兄弟達がだ。
そのそれぞれの場にいてだ。そこからだ。
二人に温かい笑顔を向けていた。そうしたのだ。
それだけだった。しかしそれで充分だった。二人にとっては。
二人は泣きそうになるのを堪えてそこにいた。ここでだ。
伊上がだ。場を変える為にこう執事に話した。
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