第3章 儚想のエレジー 2024/10
22話 挫けた者、折れた者
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首に見えたそれが実は蜥蜴の尻尾だったなんて与太話にもならない結末など、この事態をどうにかしようという殊勝な人物がいるならば骨折り損もいいところだ。
「……オっさん、状況が解ってるのか?」
「せやかて、このまま椅子に座っとるわけにもいかん。他人様にも迷惑が………」
まだ途中だったキバオウの言葉を最後まで聞くももどかしく、俺の手はキバオウの胴衣の襟を掴んでいた。そのまま力ずくで引き寄せ、鼻先が迫るところまで近寄せる。
これはあくまでも俺やティルネルの関係する問題ではない。そうではないにせよ、キバオウの安易な行動が許せなかった。他人事で済ませることがどうしても出来なかったのである。
「全ッ然解ってねえ! 今はアンタが外に出ていい状況じゃない。仮に今の体制を善しとしない派閥にアンタが囚われでもしたら、それこそ諌める人間を失うことになる! あんな胸糞悪い連中が野放しになるんだぞ!?」
「せやったら、このままあのガキどもの悪さを見て見ぬフリせいって言うんか? それこそ出来るわけないやろうが! わいの不始末にきっちりケジメ取るんは当たり前のことやないか!?」
面と向かって怒鳴り合う最中、通りからコトリと物が落ちる音で我に返る。
ふと音の鳴った方向に視線を向けると、怒鳴り声に驚いた子供のうちの一人がポーションの空き瓶を取り落していた。どうやら驚かせてしまったらしく、短めに謝罪する。ほんの些細なハプニングを挟んだが、おかげで頭に昇った血は早く引き下がり、怒鳴ったことに対する気まずさを溜め息で押し流して話を仕切り直す。
「……状況は理解した。だが、この件について俺は完全な部外者だ。アンタも、自分を担ぎ上げているのがどんな奴等なのか見定めてから行動した方がいい」
「分かっとる。……そんで、悪いんやけど恥を忍んで頼みがある。一緒にヤツらの悪事を見定めんの手伝ってくれ」
「傷心中ならもう少し謙虚になったらどうだ。他を当たってみるくらい、バチは当たらないと思うぞ。第一、手伝うにしてもそもそも手段が分からん」
「アホ抜かせ。情報は地道に足で稼ぐ言うんは坊主の十八番やないか。それに代役を探しとる間に万が一PK喰らったら、枕元に毎晩遊びに出たるから覚悟せえ」
要求と回避と意味不明な脅し文句の応酬の後、互いに一歩も引かない無言の睨み合いが小一時間続いた。しかし悲しいかな、昔に恩を受けた弱さがあってか俺が折れることとなった。
………どうやら、今日は厄日らしい。
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