第3章 儚想のエレジー 2024/10
22話 挫けた者、折れた者
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に面会するより早くに《アインクラッド解放軍》が前線よりの撤退を表明、ギルドマスターの地位を何某かに譲ったのも同時であった。当時のキバオウの心情は如何許りか。フロアボス攻略戦の場に立ち会わなかった俺には口を出す資格はないのだろう。だからだろうか、彼との接触はそれきり途絶えたままだった。
だが、キバオウは軍の内部において復権を果たしている。
しかし、先の徴税と称した恐喝紛いの略取行為や、そもそもキバオウ自身の言葉でもある《知らない》の意味によっては、きな臭いものを感じずにはいられない。
「せや、ギルドの舵取りは内部で最も周りの奴らから信頼されとった《シンカー》っちゅう男をわいの代わりに任せた。………けどな、そのやり方が微温いいう意見も出始まった」
「シンカー……というと、確かアルゴとは別筋の情報屋だったか」
「よう知っとるな。元々はギルドをクエストやら狩り場やらの情報を一早く集めて成長させる目的で引き抜いたヤツなんやけど、それだけやなくて人当たりも良い。あっちゅう間に馴染んで信頼を掻っ攫うような、妙な器のあるヤツやった」
だが、キバオウの言葉は過去形で止まる。
「せやけどな、わいのしくじりが尾を引いてシンカーを及び腰にしてもうたんやろうな。一層のボス攻略以降はそれまで死傷者が出んかったやろ? それが二十五層であのザマや。流石にシンカーも温和政策っちゅうか、積極的にボス攻略への復帰を目指すことを避けて、一層の治安維持やら福祉事業やら犯罪者狩りを始めよって、あとはギルドに所属するプレイヤーに大部分を放任したんや」
まあ、腐っとるよりは全然マシな考えやと思っとったけどな。と、キバオウは最後にポツリと肯定とも後悔ともとれない一言を零して終える。
「じゃあ、反シンカー派閥がアンタをまた担ぎ上げたのか。………だが、それについては断らなかったのか?」
「始めは断っとった。けどな、そのうち断りきれんようになってもうてな………それ以前に、わいを慕ってくれたのを無下にもできんかったんや………」
だとしたら、それこそ先程の狼藉もキバオウの責任として帰せられて然るべきなのだろう。
勝手にキバオウ一派――――彼を担ぎ上げているだけであって、実際にその派閥に名称があるのかは定かではないのだが――――を名乗っていたならばいざ知らず、受諾してしまえばもうそれはキバオウの手による悪逆と疑念を持たれるのも時間の問題ではないか。いや、或いは正常な倫理観を持つ者が複数人存在しているならば、現状の《軍》の体制を彼の敷いたものと誤認した《反キバオウ派》と呼べる存在が現れてもおかしくはない。
そして、キバオウが縛についたところで実行犯である者達には痛くも痒くもないというのが問題点であろう。竜の
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