第3章 儚想のエレジー 2024/10
22話 挫けた者、折れた者
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もないのだろう。だが、キバオウの弱々しい姿からして只事ではないというのが読み取れる。加えて彼の疲弊した様子も、それが急性のものではないのだと暗に伝えてくるようにも思えた。
「さっきの片手剣士、徴税と言っていたな」
「…………………せやな」
「あれは他の層でも行っているのか?」
「……済まん、わいにはもう、分からんのや……」
表情こそ表面上は無表情で、当時の仏頂面から思えば違和感に目を瞑れる程度の差異なのだが、語られる声色に顔をしかめる。
決して耳障りだったからという侮蔑的な意味ではないが、かつて攻略の最前線で、SAOに囚われたプレイヤーの為に奮戦していたキバオウからして想像だに出来ない憔悴を思わせるそれは、確かに聞いていて苦々しいものを感じざるを得ない。
同時に、一つ気になった点に意識が集中する。それは彼の言う《分からない》という意味がどれほどの範囲を包括しているのか、分かりかねることによる。
「………アインクラッド解放軍は、もう変わってしもうた………今のわいは、カタチだけの御輿か旗印として担ぎ上げられとるだけに過ぎん………」
「だが、アインクラッド解放軍は………攻略の最前線から一時離脱した後、信頼できる人物にギルドの舵取りを任せて、アンタはギルドマスターから退いた筈だ。それは確かオっさん、アンタ自身の意思決定によるものだっただろう」
キバオウがアインクラッド解放軍と共に前線から退いた出来事、それは二十五層フロアボス攻略戦にまで遡る。
彼の前だから言葉を極力濁したつもりだが、二十五層フロアボス攻略戦において《アインクラッド解放軍》は主力メンバーの壊滅という考え得る最悪の被害を被ったのである。
フロアボスの情報を下調べする段階で瑕疵があったわけではない。命懸けである以上、前線攻略に携わる誰しもが気を付け過ぎても足りないという共通認識の下、綿密な打ち合わせを経てフロアボス戦は開始されたのだと聞く。俺やヒヨリは終ぞ参加することは叶わなかったが、その惨状を目の当たりにしていた《片翼の戦乙女》の面々の生気のない顔は今でも覚えている。当然、虚ろとなったキバオウの意志薄弱な姿も、克明に。
残酷な話だが、結果から言うならば当時の攻略組は前提を見誤っていたのだ。或いは、それまでのボス戦において善戦していたが故に、心のどこかに慢心じみたものがあったのかも知れない。まだクォーターポイントという概念が攻略組に浸透する以前のことだったことも要因の一つであろう。ボスエネミーの特性は事前に入手していた情報と相違はなかった。だが、そのステータスは明らかに想定を上回っていたのだとクーネの口から聞いた。それによって軍の精鋭が瓦解し、戦線が混迷を極めたとも。そして間もなく、キバオウ
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