325部分:第二十四話 告げる真実その十四
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第二十四話 告げる真実その十四
独逸の立場から日本の立場になって述べた。
「しかし独逸と露西亜が揉めてくれたのは好都合だった」
「それはですか」
「我が国にとってはですね」
「そうだと」
「そうだ。露西亜の目が独逸に向かう」
それがだ。即ちだった。
「日本に向けてその牙を剥けないのだからな」
「日露戦争も考えればそうですね」
「あの戦争が戦わなくてはならず勝たなくてはならない戦争でしたが」
「それでもですか」
「ああした戦争は」
「戦争はしないに越したことはない」
伊上の考えはこうであった。
「賭けの要素が強いうえに多くの人材と予算を使うからだ」
「日露戦争でも後が大変でしたし」
「今も忘れられない位に」
「戦争は儲かるものではない」
戦争を知っているからこそだ。伊上は言い切れた。
「そのことをわかる者が増えることも祈る」
「それもですか」
「そのこともまた」
「そうだ。日本はこれからも果たしていくことが多い」
その果たすことをだ。日本にも転移させた。
「これからも。永遠にだ」
「その為にも舵取りは誤ってはなりませんね」
「独逸の様にならない様に」
「運命は決まっているにしてもな」
それもだというのだった。
「運命は決まっていてもだ」
「果たすべきことを必死に続ける」
「それが人のやることですね」
「そう思う」
ここまで言ってだった。伊上は。
盃の中の酒を飲み干した。そして自分でその酒を注ぎ入れてだ。そのうえでまた飲む。その彼にだ。周りが慌てて言ってきた。
「あの、お入れしますが」
「そんな、先生御自身がとは」
「それは」
「いいのだ」
しかしだ。彼は微笑んで周りにこう返した。
「自分の酒は自分で入れたい」
「だからですか」
「それでなのですか」
「そうだ。だからだ」
こう言ってだ。また飲む彼だった。そうしてだ。
彼は若い彼等と共に酒を飲みだ。日本のこと、そして義正と真理のことも考えていた。そうしてなのだった。彼は今は酒を楽しむのだった。
第二十四話 完
2011・9・7
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