巻ノ百二十四 大坂入城その九
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「大軍を率いて戦ったこともないからのう」
「だからですな」
「一角の将であるあの方々にお任せし」
「そしてですな」
「戦われたいですな」
「そうしたい、戦は場数が大きい」
このことがというのだ。
「だからじゃ」
「本来はそうされたい」
「しかしですな」
「茶々様はそうではない」
「何としてもですか」
「言われる」
戦のことにも口を出してくるというのだ。
「現にそれでこの度の戦にもなったな」
「はい、切支丹のことから」
「そうでしたな」
「浪人を集めることも強く言われていました」
「大名達への文も」
「前田家にも送った」
前田家の前の主である利常にだ、とはいっても利常は先年加藤と同じく瘡毒即ち腎虚で亡くなっている。
「そうしたことを常にされていた」
「そしてですな」
「今の戦にも至る」
「そして戦がはじまっても」
「何かと口出しをされますか」
「今もな、真田殿にも充分働いてもらいたいが」
赤備えでしかも赤い赤兎馬を思わせる見事な馬にのる幸村を見た、その姿に城内から兵達が喝采を送っている。
「果たしてどうなるか」
「それはですな」
今度は治胤が言ってきた。
「難しいですな」
「どうにものう」
こう話す、そしてだった。
大野が幸村を迎えた、幸村は正門から堂々と馬に乗り大助と十勇士そして軍勢を率いて堂々と入ったが。
大野は黄金に塗られた具足と陣笠、そして旗の豊臣の兵達を左右そして後ろに大勢揃えてそのうえで幸村を迎えた、彼もまた馬に乗っている。
幸村は大野に下馬をして礼をしようとした、しかし彼は微笑んでこう返した。
「それには及び申さぬ」
「左様ですか」
「はい、それは上様にされて下さい」
自分ではなくというのだ。
「そうされて下さい」
「左様ですか」
「はい、そうされて下さい」
「そしてですな」
「上様の下で戦って頂きたい」
「右大臣様の下で」
「左様です」
幸村に穏やかな声で述べた。
「是非」
「わかり申した、それでは」
「はい、その様に」
幸村も頷き彼は大野に案内されて本丸にまで行きそこで秀頼に拝謁した、そこには茶々もいてだった。
そのうえで話してだ、そのうえでだった。
秀頼に色々と任されることも言われたがその話の時にだ、幸村は秀頼に対して強い声でこう申し出た。
「それがしは城の南東に行きたいのですが」
「あそこには」
「はい、そして城の外にです」
そこにというのだ。
「出城の様なものを築きたいのですが」
「出城とな」
「あの場所が大坂城では唯一弱いと思いますので」
それでというのだ。
「守りの時はです」
「あそこで戦いたいか」
「左様です」
こう秀頼に申し出たのだった。
「そうしたいですが」
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