巻ノ百二十四 大坂入城その八
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「智将、軍師もなられるあの御仁がな」
「そして十勇士」
「天下の豪傑も揃っていますが」
「そこに忍も加わった」
「それではですな」
「戦の仕方によっては勝てる様になった」
大野はこう確信していた。
「これでな、しかしな」
「それでもですな」
「真田殿が来られても」
「勝てる様にはなっても」
「それでもですな」
「問題は主じゃ」
それが一番の問題だとだ、大野はこのことは危惧を覚えて話した。
「どうしてもな」
「そうなりますか」
「大坂の場合は」
「十万の兵に智将勇将豪傑が揃えど」
「それでもですな」
「勝てる様にはなったが」
しかしというのだ。
「勝てるかというとじゃ」
「それはですな」
「また違いますな」
「どうしても」
「そうじゃ、茶々様は今もじゃな」
弟達に顔を向けて問うた大野だった、ここでは。
「長刀を持たれご自身がじゃな」
「はい、白襷を付けられ」
「鉢巻も締められてです」
「城の女御衆もそうした格好をさせて連れてです」
「城の中を見られています」
「それは主の行いであるが」
しかしというのだ。
「それは右大臣様がされることであってな」
「茶々様は静かにされる」
「そうあるべきですな」
「こうした時北政所様は穏やかでしたし」
「大政所様も」
「そうじゃ」
この二人の様にというのだ。
「そうあるべきじゃ」
「しかしですな」
「茶々様はあの方々とは違いますな」
「生まれついての姫様」
「そうでありますな」
「しかも気がお強い」
只の姫ではなかったのだ、茶々は。
「あれは元右府様に似られたか」
「そうやも知れませぬな」
「あの方は」
「織田家の中には勘気の強い方もおられた」
茶々達の母である市の家だ、そしてその勘気が強い者こそが織田信長という訳なのだ。
「その血を受け継がれた、しかしな」
「元右府様程何でもお知りではない」
「それ故にですな」
「北政所様、そして大政所様と違う」
「それでああしてですな」
「今もな」
自ら主の様に城の中を見回っているというのだ。
「そうしておられる、出来ればわしもじゃ」
「茶々様にはですな」
「是非共」
「奥においてな」
本丸のそこでというのだ。
「静かにしてもらいたい、采配はな」
「兄上がですな」
治房が言ってきた。
「普段通りに」
「うむ、上様をお助けしてじゃ」
秀頼のことだが秀頼をこう呼ぶことも最近になってからだ、大野があえてこう呼んでからのことだ。それまでは秀頼は殿と呼ばれ茶々がその呼び方だったのだ。
「采配を振るいたい、そしてな」
「後藤殿や今来られた真田殿にですな」
「お任せしたいですな」
「戦のかなりの部分を」
「そうしたいですな」
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