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儚き想い、されど永遠の想い
320部分:第二十四話 告げる真実その九
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第二十四話 告げる真実その九

「三十にもいかないが。他の者の何倍ものことを果たされたのだ」
「そのことを果たされてですか」
「松陰先生は旅立たれた」
「その運命を全て果たされて」
「そうだ。そうされたのだ」
 まさにそうだとだ。松陰のことを話すのだった。
「あの方はだ」
「では刑死されるのも運命」
「そうなのですか」
「刑死まではわからないが」
 伊上個人としてもだ。松陰の刑死自体はだ。
 どうにも納得しきれなかった。それはあまりにも無惨だったからだ。
 それでだ。このことについてはだった。言葉を濁すのだった。
 それでだ。言うことは。
「切腹でもなかったしな」
「井伊はそこまで情けを知らなかったのですね」
「何処までも」
「そういう輩だった」
 軽蔑を込めてだ。伊上は述べた。
「先生は刑死されることはなかった。本来はな」
「井伊はあえて死罪と書き換えたのでしたね」
「橋本左内や頼三樹三郎と共に」
「そうしたのだ」
 評定の判決を重く書き換える。江戸幕府においては決してしてはならないことをあえてしてだ。その松陰達を処刑していったというのだ。
「あの男は。今もこの手で成敗したい」
「成敗されてもですか」
「そうされたいですか」
「日の本の害だった」
 伊上から見ればだ。彼はまさにそうなのだ。
 それを話してだった。彼は。
 あらためてだ。松陰に対しても言うのだった。
「刑死は無念だ。だが松陰先生の運命はだ」
「そこで終わっていたのですか」
「果たされるべきことを果たされたからこそ」
「その通りだ。人は果たすべきことをするものだ」
 生きているその時にだというのだ。
「そうしてそれを果たし終えてからだ」
「人は旅立つ」
「そういうものですね」
「そう思う。誰もが」
 ここまで言ってだった。伊上は。
 一旦酒を置いてだ。そのうえでだ。
 周りにいる彼等にだ。こう話した。
「ではだ」
「では?」
「ではといいますと」
「酒は一人で飲むものではない」
 酒を置いてそのうえでの言葉だった。
「多くで飲んでこそだ」
「だからですか」
「では我々も」
「そうしていいのですか」
「共に飲もう」 
 笑ってだ。こう彼等に言ったのである。
「若い頃はよくこうして酒をだ。千敗の方々と飲んだものだ」
「山縣先生や井上先生とですか」
「そして伊藤先生と」
「伊藤さんはあれで気さくな方でだ」
 陽気でだ。打ち解けやすい人物だったと言われている。それでだ。八方美人とも言われている。その彼ともよく飲んだというのである。
「飲んでいて楽しかった」
「そうですか。伊藤先生はですか」
「そうした方だったのですか」
「あの方もやるべきことを果たされた」
 伊藤につい
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