入学編
入学
[1/9]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
魔法。
それが伝説やお伽噺の産物ではなく、現実の技術となってから、約一世紀が経とうとしていた。
そして、春。
今年も新入生の時期がやってきた。
国立魔法大学付属第一高校−−通称魔法科高校は、成績優秀な一科生と、その補欠であるニ科生とに分けられ、それぞれは花冠−?ブルーム−?、雑草−?ウィード−−と呼ばれている。
そんな魔法科高校に、一組の血の繋がった兄妹と、既に滅ぼされているはずの家系の血を引く少女が入学した。
兄は、ある欠陥を抱える劣等生。
妹は、全てが完全無欠な優等生。
少女は、一つの魔法に特化しすぎた劣等生。
この物語は、国立魔法大学付属第一高校に、一科生として将来を有望された妹と、その補欠である兄、少女が入学した時から卒業するまでの物語である。
??????
ある閑静な住宅街。そのうちの一角に佇む一軒家。平均的に見ても、十分大きいと言える家の二階にある一部屋で、一人の少女が鏡の前に立っていた。
少女は、真新しい白いワンピースに身を包み、これまた真新しいエメラルドグリーンのブレザーを羽織っている。
そして、なんの刺繍もされていない左胸を見て、そっと溜息をついた。
「仕方ない……よね。わたしはCADを使った魔法が苦手なんだし……」
自分を納得させるように、少女はそう呟く。
言ったことは事実だし、この結果を覆すことはできない。頭では分かっていても、やはり少しは残念な気持ちがあるものだった。
「まっ、いいや。それよりそろそろ出発しようっと」
先ほどの暗い気持ちを吹き飛ばすように、わざと明るい口調で言って、時計を確かめる。
−−−うん、いい時間帯だ。
そして、にこりと微笑み家を出て行った。
……家を出なければいけない時間より、二時間以上も早く家を出ていることに、少女は結局、学校に着くまで気づかなかった。
??????
−?−あれ……人が全然いない?
学校に到着してみると、疎らに上級生らしき人が歩いているだけで、ほとんどの生徒はまだきていなかった。
−?−時間、見間違えたかな?
そう思って少女は時計を確認する。
「ああっ!」
そして、小さな叫び声をあげた。
−?−入学式が始まるまで、まだ二時間近くあるじゃない?!
途方に暮れながらも、いつまでも校門近くに突っ立っているわけにもいかない。少女はどこか、時間を潰せる場所を探して歩き始めた。
−?−あれ?あの人ってもしかして……
ブラブラと学校の敷地内を歩いていた少女は、ふと足を止めた。
視線の先には、ベンチに腰掛けて携帯端末を開いている男子生徒。
おそらく新入生だ。
−?−やっぱり似てるような??
そう思いながら、少女はゆっくりベンチに近づく。
「あの……」
躊躇いがちに声をかけると、少年はふっと顔をあげた。
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ