第四章 暗闇の亜空間
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暗闇の亜空間に、オタの鼓動が響いていた。
加えて、すぴすぴフンフンとオタの荒い鼻息が。
山田定夫、梨峠健太郎、土呂由紀彦の、三人。
彼らがいつも集まる、定夫の部屋である。
何故ことあるごとこの部屋に集まるのかというと、なんのことはなく、定夫の家はトゲリンと八王子の家のちょうど中間にあるからというただそれだけである。
暗闇、といっても漆黒の闇ではない。
パソコンモニターからの灯りによって、室内はぼーっと照らし出されている。
フィギュアやアニメポスターバリバリのオタ部屋が。
そのパソコンモニターには、アニメ映像が流れている。
彼らが作っているアニメである。
映像部分の進行具合は、残るは編集での微調整のみということで、音無しでもいいから一回通して観てみよう、どうせなら映画鑑賞のような気分を味わいたいので部屋を暗くして観てみよう、ということで、部屋を暗くしていたのである。
実質三畳ほどの暗闇空間の中にデブ二人とガリ一人が、まるでブロイラーの鶏のごとくひしめき合ってハアハアいっている。
鶏と異なるのは、彼らがみな、なんだか充実したような、幸せそうな顔をしているというところくらいであろうか。
いや。
ような、ではない。彼らは充実感、達成感、幸福感を、間違いなくその胸に味わっていた。
みなで作品を作り上げていくという喜びと幸せを。
さて、アニメの物語部分がすべて終了して、黒背景に白文字のエンドロールが流れている。
といっても、一画面に余裕で収まる程度のものを小出しにしているだけであるが。
総監督 山田定夫
コンテ 山田定夫
キャラクターデザイン 梨峠健太郎
作画監督 梨峠健太郎
CG作成・編集 土呂由紀彦
演出 山田定夫・梨峠健太郎・土呂由紀彦
制作 スタジオSKY
と、これだけしかないのだから。
なおスタジオSKYであるが、定夫、健太郎、由紀彦、の頭文字だ。
一昨日、八王子の思いつきでグループ名を決めようということになり、考えて出され、急遽エンドロールに組み込んだのだ。
クレジットが本名であるが、これは伏せるべきか検討中だ。
伏せる場合はおそらく、レンドル、トゲリン、八王子、だろう。
黒背景の中で文字が完全に流れ終えたことで、部屋は光源を失って真っ暗闇になった。
しばらくそのまま、余韻に浸る三人。
やがて、定夫は腕を伸ばし、勝手知ったる我が部屋の電灯紐を迷いなく掴み、引っ張った。
ぱちぱちと蛍光灯が瞬きし、部屋に白い灯りがついた
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