第四章 暗闇の亜空間
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それを作っちゃうだなんて、そんな技術があるのかな。
この人たちがというより、一介の高校生に出来るものなのかな。
仮に、確固たる技術力を持っているとしても、セルを何千枚カラーを何百本と買っていたら、お金だっていくらあっても足りないでしょう。
「うーん」
難しい顔で、小声を発する敦子。
現在でもアニメはセル画の裏を塗って動画作りをしている、と思い込んでいる敦子なのであった。
「あの掛け合いのところ、でござるか?」
「うん。絵そのものは、あのままでとりあえずは問題ないんだけど、抑揚というか、まあその元の台詞がさ、もっとしっくりくるものがあるような気がしてさあ」
「おれたちの声が酷かったせいで、掛け合い自体が最悪だったからな。だからこそ台詞をいじってみれば、というのは分からなくはないけど、でも、だからこそなにも考えが沸かないんだよなあ」
「掛け合い、だからね。だから、ぼくらどうこうではなく、反対に、ほのかちゃんの声がはっきり決まればいいんだよね」
こ、こ、声っ、声の話が出たあっ。
……ごくり。
6
山田定夫、トゲリン、八王子の三人は、北校舎一階の廊下を歩いている。
先ほどまで英語の授業を行なっていた視聴覚室から、南校舎にある自分たちの教室へと戻るところだ。
「……だよなあ。メグの声は、どうにもしっくりこなかったからなあ」
いついかなる時であろうとも、彼らが口にするのは、やはりアニメや漫画の話。
しかしいま、彼らの表情は実に真面目であった。
なんとなくのほんわか雑談ではなく、職人のような真剣な表情であった。
「もうさあ、決めちゃおうか。メグは使わない、人を探す方向で行くってまず決定しちゃおうか。ここで悩んでちゃ、進まない」
なんの話かというと、自主制作アニメの話である。
声をどうするかで制作が行き詰まっており、ついはぐらかすように一般アニメの話などをして盛り上がってしまうのだが、避けて通れない問題であるという認識は持っており、やがてこのように戻ってくる。
だが考えても論じてもまとまることなく、やがて現実逃避。
つまり一般アニメやゲームの話などを始める。
と、このところの彼らの言動パターンは、すっかりぐるぐる回ってしまっていた。
だからこそ八王子は、その状態から抜け出すべく即決を促したのであろう。
「拙者たちも、そう決めたいところであるが。……いや、人に演じてもらう、ということに関しては賛成なので、決定にはなんら問題ないのでござるが。ただ、そうなると必然ぶつかる壁が……」
「どういう人に、どう依頼をするか、とどのつまり、そこなんだよな」
と、定夫が言葉を続けた。
要するに、愛のない作品にしたくないのだ。
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