第四章 暗闇の亜空間
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しかし、漫画家に付き物である絵柄の自然な変化までをも読者への謎かけに利用してしまうとは、みたあおや先生の発想力にはほんと脱帽する。
読者を楽しませようといういたずら心で一杯なんだろうな。
漫画家と、声優。違いこそあれども、わたしにも同じように、ドキドキやワクワクをみんなに届けられるような、そんな人間になれるのだろうか。
なりたいな。
そんな爽やかな願望を胸に呟きながら、北校舎へと入り、廊下を歩いていると、不意にその目が驚きに見開かれた。
「あーーーーーーーーっ!」
絶叫していた。
「どうした、敦子!」
「日本脳炎かあ?」
「今日も背がちっちゃいぞお!」
香奈たちに囲まれ頭をぐりぐりやられる。
いたたっ!
ち、違う、日本脳炎ではない。
ついに、
ついに、わたしは……
発見したのだ。
遭遇したのだ。
遭遇っ、したのだあああ!
などと興奮気味モノローグを続ける敦子の視線の先にいるのは、
彼らであった。
ぶくぶく肥満したオカッパ頭の男子が二人、挟まれたようにガリガリ男子が一人。
「うわ、イシューズだ」
「最悪!」
「おえーっ」
香奈たちも彼らに気付いたようで、嫌悪感満面の渋い顔になっていた。苦虫を口の中ぎっちり詰め込まれたかのような。
そう、
敦子は久々に、イシューズさんたちと巡り会えたのである。
初めて見かけて以来の、二度目の出会いを果たしたのである。
そのことに敦子は感激、興奮していたのである。
イシューズとは、学校で有名らしい、アニメオタク三人組だ。
敦子が、アニメ仲間がいて羨ましいな、と思っていた三人組だ。
会えただけで感激するくらいなら、彼らのいる教室に行けばいつでも拝むことは出来ただろう。
それでは運命の遭遇にならないから自重していたのであるが、まさかこんな予期せぬタイミングで会えるとは。
まあ、運命の遭遇といっても、恋愛感情とかそういうものでは勿論なく、どちらかといえばレアアイテムゲットという程度の、流れ星を見たという程度の、茶柱が立ったという程度の、そんな感覚であったが。
それにしても、イシューズさんたち、今日はなんの話をしているのだろうか。
気になるなあ。
「ちょっとごめんっ、先に行ってて!」
彼らの背中から視線をそらすことなく、追うように早足で歩き出していた。
「えー、もう時間ないよお!」
須藤留美が大声で呼び止めるが、敦子は振り向かなかった。
聞こえてはいたが、一瞬でも彼らから視線を逸らしたら、もう二度と遭遇しないような気がして。だって彼らは、もしかしたら妖精さんかも知れないのだから。
大丈夫
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