第四章 暗闇の亜空間
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三人は、パソコンモニターの前であまりに密着し合っていたことに気が付いて、慌てたように距離を取った。
「いや、なかなかいい感じに仕上がってきたね」
八王子は、ベッドへと這い上ると、ガリガリの小柄な身体を小さくぼよんと弾ませた。
「いい感じどころではなあい! 感動、感動の嵐がっ、拙者の胸の中を吹き荒れているでござるっ!」
一体どんな身体の震わせ方をしているのかトゲリン、黒縁眼鏡がカタカタカタカタ、ずり下がるのではなく反対にずり上がっていく。よい機会だとばかり、滲む涙をティッシュで拭い、ぶちぶびいっと勢いよく鼻をかんだ。
定夫も、なんともいえない嬉しさ、こそばゆさが、全身を駆け巡っているのを感じていた。
泣き出したり、振動で眼鏡ずり上げるほどではないが。
とにかくこの嬉しさを次のステップへの原動力にして、さて、なにをすべきかであるが、
映像はほとんど完成した。となると……
「あとは、音をどうするか、だな」
音、つまり鼓膜に入る情報、つまり声と背景曲そして効果音である。
現段階では、音が出来ているのはオープニング曲のみ。
本編部分はまだなにも取り組んでおらず、完全なる無声無音だ。
まずは映像、ということで後回しにしてきたため、仕方がないところである。
でもこれからは、むしろ音響こそが作業の中心になるのだ。
映像がほとんど終わったいま、本腰を入れて取り掛からねばならないものだ。
「それじゃあ、おれ音響監督やるよ。絵を作ったり動かしたりにはまったく関わってなかったからさ」
自分の、ネット掲示板への呟きから生まれた企画だというのに、なのに蚊帳の外的な、そこはかとない寂しさを感じていた定夫である。
常々、自分もなにか技術的に担当出来るような部分を持ちたいと考えていた。
総監督、という一応の身分ではあるが、結局お話はみんなで相談して作り上げてしまったわけであり、自分だけなにもしていないという気分は否めなかった。
音ならば、やれるんじゃないか。
と、いまふと思って、提案してみたというわけである。
「そうだね、音の製作指揮もいないとね」
「しからば、レンドル殿に音響は任せたでござる」
「でも、どんなふうにしていくつもり?」
「ああ、ええと、まず効果音だけど、これはネットからフリーのを拾って使い、足りない部分は自分で作ろうかと」
「自分で?」
「ほら、有名なのに、小豆で波の音というのがあるだろ。そんな感じに、なんか工夫してやれないかと。あとは、なんか適当に録った音を、パソコンのエフェクターソフトで加工して違う音に作り上げるとか。……音のデータって、アニさくで何個でも置けるんだっけ?」
「同時発声は、九十九ファイル。一つのプ
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