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未来から【タイム魔人】で現代日本にタイムトラベルした私
未来から【タイム魔人】で現代日本にタイムトラベルした私
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四法廷で第一回の公判は始まった。ひと目連続殺人犯を見ようと、くじに当たった人達で傍聴席は満員になった。裁判官三名と裁判員五名を前にして、検事は滔々≪とうとう≫と私の罪状(?)をモニターで大写しにして述べ立てた。だが、肝心の弁護士は弱々しく反論し、減刑を訴えることにのみに終始した。
 被告人席に呆然と立ちすくんでいる私でさえ,眼をそむけたくなる映像で、思わず、足元に、今朝の食事の大半をぶちまけてしまったほど、残酷な殺害シーンであった。
 検察が提出した物的証拠通り、被害者の体に残した精液は、DNA鑑定をすれば、十兆人に一人の人物を特定できる。殺害に使用した十三本の種類の異なった包丁。その全てに、私の(?)指紋がくっきりと残されていた。だから、言い逃れは不可能だったのだ。
 何回かの公判を経て、いよいよ、判決の時がきた。
 裁判長が判決文を読み上げた。
「主文、被告を死刑に処す……己の性的欲望を満たすために、尊い人命を軽視し、面識もない十三名の女性を強姦したあげく、残忍な手口で殺害し、あまつさえ、バラバラに切り刻んだ。しかしながら、被告には一片の反省すらなく……」
 長い説教じみた判決文を、ボンヤリ聞きながら、あと何日拘置所にいるのかと推測していた。
 この時代の刑法制度は最高裁まで控訴すれば、六〜十年は要するだろう。が、その時には、三千四百九十一年の未来に帰って居るだろうから、それまでの辛抱だと楽観視していた。
 三畳一間に、便器がむき出しの独房で暮らすのは、余り心地よいはずはない。弁護士が控訴の打ち合わせのために、面会にきてくれる。その時、持ってきてくれるこの時代を反映する、数々の書物を悠然と読める。無上の幸せであり、刑務官も私の該博≪がいはく≫な知識に一目置いてくれていて、粗雑な扱いは受けなかった。

 私の私物に、ベロサーチの旅行カバンがあった。中には雑多の服や書籍に混じって、約二億円現金があり、裁判でも追及された。が、頑として私のものだと訴えた。盗難届も出ていないので、私物として拘置所に保管されている。
 断胴台で四つの胴体(つまり、死刑)になれば、約二億円は国庫を潤す金になるのだ。しかしながら、この時点でも、私は未来に帰れると確信していた。だが、少しだけ、不安がかすった。
 乗り移った青年が連続殺人魔だとは、今さら嘆いても手遅れで、早く元の世界に帰ることだけが生き甲斐であった。まさか、死刑囚の目で、二十一世紀を観察するとは考えてもみなかったが、ある意味、優れた映像論文を書ける好機かも知れない、と胸がワクワクした。

 ところで、確か、タイム魔人は言っていた。
「今から、五年後の四時から五時に、緑の渦が出現するから、必ずその渦に入るように……。そうでないと、貴女は、その時代に取り残されてしまいます
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