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未来から【タイム魔人】で現代日本にタイムトラベルした私
未来から【タイム魔人】で現代日本にタイムトラベルした私
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たが、何の情報も投影されてはいない。ただ単に無地のクリーム色の無機質で、冷たい低い天井があるだけだ。
 私は、ある男性に乗り移って、二千四十年四月の日本にきた。長い間、着慣れない窮屈な洋服を無理に着せられた感じが続いた。だが、細かな情報は記憶装置チップに入って、脳にある。とはいえ、現実の生活に心身ともに、早くなれる必要がある。でも、実際は、この時代で言うところの一週間は要した。戸籍、住民届、身分証、カード、現金……などは、私が着てきた服に入っていた。が、カード一枚でほとんどの用は足りた。
 宿泊先は、高級なレキシントンホテルのダブルに決めていた。だが、食べ物の口に合わないのには辟易≪へきえき≫したが、何事も訓練で、そのうち吐かずに喉を通るようになってきた。この時代の食べ物になれたことに感慨すら感じた。この分だと、一年間の研究は、ますます楽しみに思われてきた。
 実際、この時代にタイムトラベルしようと決意した時は、大きな不安と緊張に眠れぬ日もあった。が、「案ずるよりも産むがやすし」とは、言い得て妙なる諺である。古人の優れた洞察に改めて感心した。レキシントンホテルを起点として、関西州の都会、農村部、と精力的に視察を重ね、脳波論文を二カ月ほどで快調に仕上げつつあったある朝、朝食です、と言うボーイの声でドアーを開けた。
 すると、見知らぬ男達がズカズカと八名入ってきて、警察の金色に輝くメダルと、逮捕状を見せるなり、両脇をつかまれた。有無を言わせず、県警の捜査一課の取調室に連行された。
「ネタはもう十分あるから、早く白状してすっきりしたほうが、お前さんのためにもなる。当然、君には黙秘する権利もあるし、知り合いに弁護士がいるなら、我々が呼んでやるが、いなければ、金銭に余裕がありそうだから、弁護士手配するが……」
 眼光鋭く、大きな声で迫られた。
「何かの間違いではありませんか?」
 と、しきりに大声で叫んだが、
「はっ、はっ、はっ、はっ……」
 と、歪めた口から発せられた、笑った声にかき消されただけであった。
 三十日間拘留され、朝九時から晩の九時まで、十九件の婦女暴行、殺人、死体損傷、死体遺棄……などを白状するよう迫られた。が、何のことか理解できない私は、警部補の言う黙秘を続けざるを得なかった。
 拘留中、何度も検事室に連れていかれ、警視正の安田検事に会った。私は、その都度、無罪を主張したが、起訴に持ち込まれることを、確信しただけであった。
 その間、面会にきた、よれよれの背広を着た赤ら顔をした弁護士に、何度も何度も無実を訴え続けた。だが、精神鑑定に持ち込むのが精一杯で、心神耗弱の線で検事と争ってみる。しかし、客観的事実が揃い過ぎているので、無実を主張しても無駄だろうと言い渡された。拘留期間後、早くも神戸地方裁判所第
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